『最愛』の第1話が放送されると、“#Nのために”がトレンド入りしました。

『Nのために』は湊かなえ原作の純愛ミステリーで、2014年にTBS系でドラマ化。同作は、現在放送中の『最愛』と同じく、演出の塚原あゆ子さんとプロデューサーの新井順子さんのタッグが組まれています。『最愛』を観てこの『Nのために』を想起した人が続出したようです。

実際、『最愛』と『Nのために』は共通点が多いのです。
例えば、主人公と幼馴染みが、時を経て東京で再会する点。『Nのために』では瀬戸内海に浮かぶ青景島で育った希美(榮倉奈々)と成瀬(窪田正孝)が、『最愛』では白川郷で育った梨央(吉高由里子)と大輝(松下洸平)が、東京で再会します。

また、どちらも、奇しくも15年間という時間が描かれています。『Nのために』では、最初の成瀬の実家の放火事件から5年後のスカイローズガーデンの殺人事件、またさらにそこから10年後の世界が描かれています。『最愛』では、梨央が白川郷を去り、東京の大学に進学してから15年後に、大輝と東京で再会します。

“壁ドン・顎クイ”が苦手な人にこそ刺さる!『最愛』が描く愛のかたちと『Nのために』との共通点_img0
金曜ドラマ『最愛』(TBS)毎週金曜夜10時〜/ドラマ公式サイトより

『Nのために』の主人公・希美は裕福で幸せな家庭で育ちますが、ある日父親が愛人を連れ込んで、希美たちを追い出したことから生活が一変します。経済的に困窮するだけでなく、母親がショックから精神的に不安定になり、毒親へと変貌。希美を束縛するようになるのです。
 
そんなとき、心の支えになるのが成瀬です。希美は周囲に気丈に明るく振舞いますが、母親の奇行により追い詰められるとき、成瀬がそれを目撃するのです。成瀬だけは、希美の置かれた状況の理解者です。毎日放課後、海の見える休憩所で将棋をしたり、「野望リスト」を作って発表しあったり、夜中に落ち合って自転車でふたり乗りしたり。運命に翻弄され、険しい現実を生きる中でも、ふたりでいる時間には幸福と安らぎが満ちています。島を出て東京の大学に行く、その夢を胸に、ふたりは励ましあいながら、困難を超えていきます。しかし、東京で再会した後、ふたりは殺人事件に遭遇し、それから疎遠になってしまいます。
 
自然の中で青春時代を過ごしたふたりが、事件をきっかけに疎遠になってしまう流れは、『最愛』も同じです。白川郷で過ごす梨央と大輝は互いを思い合う関係ですが、ある日寮で事件が起きます。梨央は東京に発つ日を大輝に知らせず、その後ふたりは15年もの間会うことはありません。

しかし大事な共通点はそこではありません。
このふたつのドラマの大事な共通点は、まず、わかりやすい恋愛描写がない点ではないでしょうか。

 

ドラマ『Nのために』のあらすじ

“壁ドン・顎クイ”が苦手な人にこそ刺さる!『最愛』が描く愛のかたちと『Nのために』との共通点_img1
『Nのために』(TBS・2014年)/ドラマ公式サイトより

2004年12月24日事件当日、超高層マンション「スカイローズガーデン」の一室で、そこに住む野口夫妻の変死体が発見された。現場に居合わせたのは、西崎真人・杉下希美・成瀬慎司・安藤望の4人。それぞれの証言は驚くべき真実を明らかにしていく。高野茂は出所直後の西崎と出会い、彼に事件の真相を聞き出そうとする。実は、高野は香川の青景島で駐在員をしていた過去があり、その島で起きた時効寸前の成瀬父が経営していた料亭「さざなみ」の放火事件を調べている。現場には高校時代の希美・成瀬がいて、同様にスカイローズガーデン殺人事件でもふたりが居合わせていたことから、希美と成瀬に疑念を持ち続けている。
物語の主要登場人物たちは全員イニシャル「N」であり、 現在と過去を交錯させながら、ある殺人事件の真相を軸に、各人物たちが抱える愛の物語を明らかにしていく「純愛ミステリー」。