前方のクルマとの車間距離を意図的に詰めたり、進路を妨害したりするといった、いわゆる「あおり運転」の被害に遭う人が後を絶ちません。昨年の法改正で「あおり運転」については厳罰化が図られましたが、実際に摘発されたのはわずか100件程度にとどまっています。

 

警察の仕事はあおり運転の対処だけではありませんから、悪質なケースに集中せざるを得ないのが現実だと思いますし、被害者がドライブレコーダーを搭載していない場合、立証が難しいという問題もあるでしょう。

あおり運転は決して許される行為ではありませんが、警察の対応に限界がある以上、良識ある個人としては、一連の被害に巻き込まれないための工夫が必要だと思います。具体的に言えばトラブルを誘発しやすい運転を避けることです。

近年、スマホやドライブレコーダーの普及によって、トラブル発生時の映像をネットで閲覧できるケースが増えてきました。こうした映像を注意深く観察すると、あおり運転の被害に遭いやすい運転というものが見えてきます。

代表的なのは、追い越し車線をゆっくりとしたスピードで走るケースです。こうした運転は、後続のクルマから見ると進路を妨害しているように感じられることがあります。本人は「制限速度を守っているのに何か悪い」という感覚かもしれませんが、道交法では「追い越し車線を走り続ける」こと自体が違反であり、また「交通の円滑を図る」ことも義務付けられていますから、追い越し車線を過度に遅い速度で走る行為はマナー違反ですし、トラブルを招く原因となります。

交差点での一時停止もしばしばトラブルの原因となっているようです。交差点では双方、一時停止するわけですが、相手を優先させるのか、自分が先に行くのかという意思表示は明確にしなければなりません。少し進んだと思ったら止まってしまい、相手が進もうとすると前進するといった優柔不断な運転は相手を苛立たせます。

先日、ある広い道路で、驚くような光景を目にしました。信号がない場所だったことから、複数の歩行者が勝手に道路を横断していました。当然、違法行為ではありますが、歩行者はクルマの流れが切れるまで道路の真ん中(センターラインの部分が広くとってあるのでスペースがある)で待っていました。ドライバー側も、歩行者が車列が切れるのを待っていることを理解しており、気にせず通過していきます。

ところが車列の後方にいたクルマは、歩行者を渡らせようとしたのか、いきなり減速して道の真ん中で停止してしまいました。車幅の広い4車線の道路ですから後続のクルマはさぞ驚いたことでしょう。後続車は、前のクルマに対して激しくクラクションを鳴らし、道路を渡ろうとしている歩行者もなぜクルマが停止したのか困惑している様子でした。

一連の混乱は、すべて違法に道路を渡ろうとした歩行者に責任がありますし、こうした運転をされたからといってあおり運転をしてよいという理屈にはなりません。しかしながら、抑制が効かない暴力的な人物というのは社会には一定数存在しているものです。良識人として、こうした人とはできるだけかかわらず、トラブルを回避する知恵が必要であると筆者は主張したいのです。

統計的な裏付けがあるわけではないのですが、近年、こうした優柔不断な運転を行うドライバーが増えている印象があります。おそらくですが背景には社会システムの大きな変化があると考えられます。

 
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