ネット通販の発達で荷物を配送する軽自動車の数が増えており、他の仕事に従事していた人がフリーで配送の仕事に就いているケースもあります。かつて荷物の配送はプロがやるものという位置付けでしたが、十分に運転経験を積んでいない人もワゴン車を運転をせざるを得ない状況になっているわけです。

 

タクシー運転手も同様です。かつてのタクシー運転手はぶっきらぼうな人が多く、決してサービスが良いとは言えませんでしたが、少なくとも運転経験は豊富でした。ところが今の時代は、顧客対応などサービスが重視されますから、運転技術よりも顧客対応能力が優先されがちです(東京など大都市圏ではその傾向が顕著です)。直線道路でずっと青信号が続いているにもかかわらず、どういうわけか制限速度をはるかに下回ってノロノロと走るタクシーや、赤信号で停止する際、前方のクルマと異様なまでに車間を取って停止するタクシーは今ではめずらしい存在ではありません。

 

IT化や副業化の進展でギグワーカー(ネットなどで単発の仕事を受け負う労働者)が目立つようになっていますし、マイカー離れによって、クルマを持っていてもたまにしか運転しない、あるいはクルマを持たずカーシェアで済ませる人も増えています。日本の場合、高齢化による判断力の低下という問題も加わってきますから、非常にやっかいな状況といってよいでしょう。

一連の変化は社会システム全体の変化と密接に関わっていますから、安心してクルマと付き合える社会を構築するためには、根本的な対策が必要です。短期的には各種法改正や技能向上策などが考えられますが、筆者は最終的には自動運転システムを普及させることが一番だと思います。

自動運転システムが普及すれば、少なくとも人間の判断ミスや性格的な問題による事故やトラブルをなくすことができます。技術というのはこうした分野に適用してこそ意味のあるものですから、それなりの金額を投じる価値があるはずです。歩行者もドライバーも安心してクルマを利用できる社会が来て欲しいものです。


前回記事「日本だけ、物価が上がっても給料は上がらない残念な理由」はこちら>>

 
  • 1
  • 2