大塚寧々さん、53歳「若い頃とは違う景色が見えるようになった」_img0
 

長崎港の沖合約19kmの海に浮かぶ端島は、遠くから見ると軍艦のように見えることから、“軍艦島”と呼ばれています。明治から昭和にかけて海底炭鉱によって栄えていました。東京ドームのグラウンド約5個分という小さな島に、最盛期には5200人もの人々が住み、東京の9倍を超える人口密度は世界一とも言われました。1974年の閉山をもって島民が島を離れてからは、日本初の鉄筋コンクリート造りの高層住宅郡は朽ちるがままでした。

 

2009年から一部エリアに限って見学が可能となり、2015年、「明治日本の産業革命遺産」の一部として、軍艦島が世界文化遺産に登録されました。映画やPVなどのロケ地としても注目を集めており、12月10日(金)から公開の映画『軍艦少年』でも、軍艦島で撮影が行われました。これは、軍艦島が世界文化遺産に登録後、初めての映画撮影となりました。

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©2021『軍艦少年』製作委員会

本作は、『ギャングキング』『セブン☆スター』などで知られ、ヤンキー漫画のカリスマとして人気の柳内大樹さんの漫画『軍艦少年』が原作。長崎・軍艦島の見える街で暮らし、地元の高校に通う主人公・坂本海星(かいせい)と、小さなラーメン屋を営む父・玄海(げんかい)。海星にとって最愛の母であり、玄海にとっては軍艦島で共に生まれ育った幼馴染の妻である小百合は、病気でこの世を去ってしまいました。大塚寧々さんは、この小百合を演じています。

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©2021『軍艦少年』製作委員会


自分の体が雑巾のように絞られるような苦しさを感じた


「ドラマ『おっさんずラブ』の時のYuki Saito監督が、声をかけてくださいました。もともと少年漫画は好きなんですけど、原作の漫画を読んだ時、かなり心揺さぶられました」

撮影を行ったのは新型コロナウイルス感染拡大前の2019年6〜7月で、大塚さんも長崎で撮影に挑みました。

「私も軍艦島に行きたかったのですが、規制が厳しいので行けませんでした。なので、対岸からいいな〜、行きたいな〜と思いながら眺めていました」

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作品は、大塚さん演じる小百合が亡くなった後を描いており、海星はやり場のない感情から喧嘩に明け暮れ、玄海は酒に溺れる毎日。お互い反目しあっていました。ひりひりと焼け付くような感情を露わにする場面がある一方で、小百合の病気が進行し、夫と息子を残して逝かざるを得ない現実に苦しむ様子や死への恐怖も丁寧に描かれています。

「演じていて、自分の体が雑巾のように絞られるような苦しさを感じました。思考も停止するくらいの苦しい感情でした。でもどうしていいかわからない。小百合もそんな気持ちだったんじゃないかと思います。手紙を書くシーンがあるのですが、実際に書いていていろんな思いがあふれてきました。それを受け止めながら、感じながら、途中まで書いては止まり、書き直して……、という感じでした」

夫・玄海は、入院生活を送る小百合を献身的に看病し、夜に人知れず神社でお百度参りをし、小百合の回復を信じていました。そんな玄海を演じる加藤雅也さんとは、何度も共演したことがあるとのこと。

「もしかしたら、今まで一番共演しているかもしれません。夫婦役は初めてだったかもしれませんが、共演が多い加藤さんとだからこそ夫婦らしさや、深いつながりを出せたんじゃないかなと思いました」
 

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