“古いタイプの男”だった八嶋智人さんが、多様性という言葉で思い出す風景「まだ幼い息子と英語しか話せない友人が...」_img0
 

多様な生き方が選べる時代になったと言われるけれど、私たちが立っている今この地平は、それまで生きてきた様々な時代の女性たちの葛藤や反発や抵抗や決断によって開かれたもの。年表をほんの少し遡れば、今とはまったく異なる環境や価値観の中で生きてきた女性たちの日々があります。

2022年1月7日(金)から開幕の舞台『ミネオラ・ツインズ』は、激動の時代を駆け抜けた双子の姉妹の物語。始まりは1950年代。共和党・アイゼンハワー政権下を生きる双子の姉妹・マーナとマイラの日常から物語は幕を開けます。

結婚こそが女性の輝かしいゴールと信じて疑わないマーナと、世間の常識から大きく逸脱したマイラ。同じ家庭で育ったはずなのに、生き方考え方は正反対。そんな姉妹の人生を、1950年代、1969年、そして1989年の3つの時代を通して描いていきます。

俳優・八嶋智人さんが演じるのは、マーナの息子・ケニーとマイラの息子・ベンの2役。「もともとは男性優位で年功序列的な考え方だった」と明かす八嶋さんは、戯曲の中で描かれる2人の女性の人生にどんな想いを寄せているのでしょうか。

 


この作品は、自分の価値観や生き方を問う指針となる


――八嶋さんは、このマーナとマイラという対照的な双子の生き方についてどんな印象を抱きましたか。

「僕の意見で言うと、どちらかに対して批判的で、どちらかに対して批判的ではない、ということはまったくないですね。人の人格は、環境によってつくられるもの。社会情勢や政治的背景が変化していく中で、この2人の生き方や性格も変わっていく。そこがこの作品の面白いところで。両極端な2人の人生を俯瞰して見ることで、たぶんお客さまの人生観にもフィードバックされるものがあるんじゃないかと思います」

“古いタイプの男”だった八嶋智人さんが、多様性という言葉で思い出す風景「まだ幼い息子と英語しか話せない友人が...」_img1

 

――今や結婚してもいいし、結婚しなくてもいい時代。あそこまで無邪気に結婚こそが幸せなのだと言い切れるマーナに、ある種、隔世の感のようなものを抱きました。

「あの場面の時代設定は1950年代。その頃の古き良きアメリカのいいイメージだけを切り取ると、マーナのように考える人は多かったんじゃないでしょうか。特にこの姉妹が生まれ育ったミネオラという街は、ニューヨーク郊外。いわゆる地方です。地方に行けば行くほど価値観の多様化が進んでいなくて、王道こそ良しとなりやすい。だから、マーナがそう考えるのも当然と言えば当然なんですよね。

それに対してマイラは、そういう王道に疑問を抱くタイプの人。彼女はいわゆる不良なんですけど、不良というのは反発心もあって世間や親の言うことに対して、『それ、おかしくねえか?』と疑問を抱きやすい。そういう意味では世の中を見る目をマイラは持っている。

今でこそ日本も多様性という言葉がよく使われるようになって、保守的なマーナは時代錯誤に見えるかもしれないですが、当時はまだそれが表面化していない時代で。どっちが間違っているなんてことはまったくなくて、僕から見ると2人ともすごく純粋。どちらに対しても批判的ではない、と言ったのはそういう意味なんです」


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この笑顔がトレードマーク。
次作では少年役にも挑戦する八嶋智人さん

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