恋愛関係じゃなくたって、誰かとの深い愛は育める

“壁ドン・顎クイ”が苦手な人にこそ刺さる!『最愛』が描く愛のかたちと『Nのために』との共通点_img0
写真はイメージ/shutterstockより

一方、『最愛』もタイトルの通り、それぞれに最愛の人(もの)がいます。梨央は持病のある弟、優のために治療薬を開発すべく奔走します。また、弁護士の加瀬は、梨央を守るためにあらゆる手を尽くします。

8話で、梨央に「私のことどう思ってるの」と聞かれた時、加瀬は「家族だと思ってる」と答えます。普通のドラマなら、男女間で助け合うのは恋愛感情から、という方程式に回収されそうですが、そうではない、ただ梨央の苦労や頑張りを知って、純粋に応援したい、梨央が夢を成し遂げる姿を見たい、そんなまっすぐで純粋な愛を感じさせられるシーンでした。

大輝と梨央は15年後に殺人事件を追う刑事と、重要参考人という立場で再会するため、最初は他人行儀なものの、ふたりきりになると、まるで15年前に戻ったように、ふたりの間には当時の柔らかい空気が戻ります。『Nのために』と同様、ふたりになると方言に戻って素が出るところも、ふたりの信頼関係の強さ、心を許し合える関係であることを印象づけます。

 

『最愛』では、このように様々な愛、が同時並行的に描かれます。梨央と優の姉弟愛、加瀬の梨央と優への家族愛、後藤の会社への愛、渡辺昭の息子への愛。

愛は恋愛だけが特別じゃない。
男女の愛は恋愛だけじゃない。
そんなメッセージを感じるのです。

『Nのために』は一見、希美と成瀬は恋愛感情でお互いを好きなようにも見えます。しかし、よく考えると、恋愛である必要もなく、もしかしたら違うのかも、とも思えてきます。男女である前に、人間として、大切で、尊重しあえて、ただただ相手に幸せになってほしい、と心から思える存在。

その人がいるから、どんなことも超えられる。
その人と一緒にいられるなら、地獄のような場所も、天国に変わる。
その人の幸せのためにならなんでもできる。

そんな、愛することの素晴らしさを、両ドラマは教えてくれています。
 

文/ヒオカ
構成/金澤英恵