突然ですが、「シスターフッド」という言葉をご存知ですか?

耳にしたことがある方もいれば、初めて聞く方もいるかもしれません。

「シスターフッド」とは、元々は1960年代後半にフェミニズムの標語として生まれた言葉。しかし近年 #MeToo 等の流れにより、改めて注目を集めています。

その意味は「女性同士の連帯」。

多くの場合、愛情や友情を伴った精神的な繋がりを指して使われますが、例えば一つの目的に向かって理念を共有したり、共闘・共創できる関係も「シスターフッド」の特徴。同じ目標に向かう人であれば、血縁や友情はなくともシスターフッドを結ぶことができるという考え方です。

2021年も今日で最後。この記事では、ミモレの編集という仕事を通して、私が体感した「シスターフッド」について書き残したいと思います。

撮影/大坪尚人


どんな女性も安心して読めるWEBメディア・ミモレとの出会い


「ミモレで小説を書いてくれませんか」

初めてのミモレでの仕事は、こんな有難いオファーを頂いたことから始まりました。

これまでもWEBメディアで小説を書いてきましたが、WEB小説を書くにあたり大事なことの一つは、“掲載するメディアに小説のテイストが合っているかどうか”です。

そこでミモレのコンセプトを調べたところ、私がとても感銘を受けたのは「ペルソナ(読者像)」を立てないという点でした。

結婚していても、していなくても。子どもがいても、いなくても。仕事の有無も、どこに住んでいるかも関係ない。気持ちも体調も揺れるミドルエイジの女性に向けて、読者が疎外感を感じることなく、安心して楽しめるメディア。

このコンセプトを知ったとき、何だか心が洗われて、とてもホッとしたんです。

女性として人生を歩む中で、それぞれのステータスや出自により女性同士が分断され、苦しい思い、理不尽な経験がある方はきっと少なくないと思います。悪気がなくても加害者となってしまったり、誤解を生んでしまった......という経験談も、職業柄よく耳にします。

けれど、それは“ある程度は仕方のないこと”、あるいは“大人の事情”として、臭いものに蓋をするように無意識に処理をしてきました。

そんな中、ミモレはWEBメディアという媒体を通して、そんな女性のモヤモヤした心情を包み込んでくれるような居場所を提供してくれていたんです。

そして、このコンセプトにできるだけ寄り添い執筆したのが、『風の時代の女たち』です。

撮影/大坪尚人

詳しいあらすじは割愛しますが、共著者の安本由佳さんとストーリーを練る中で意識したのは、まさに「シスターフッド」と言える女性同士の連帯、ステータスを越えた絆。去年話題となった「風の時代」で変化していく価値観や、女性特有の悩みやしがらみからの解放など、多くのテーマを詰め込んだことで、執筆を重ねるごとに自分自身も癒された作品です。

宣伝になってしまいましたが(笑)、良ければお休みのお供に読んでいただけたら嬉しいです。

 

ミモレを通して体感できた「シスターフッド」


そしてこの小説執筆がきっかけで、なんとミモレの編集として加わらせていただくことになりました。これは私にとって今年一番大きな転機です。

何より嬉しかったのは、長年のライター仲間と一緒にミモレで連載を作ることができたこと。

これまで私の仕事の仕方は、どちらかというと一人で、まるで修行僧のごとく静かな場所に籠もってひたすら執筆に励む……というものでした。頼れるのは自分だけ。締切前に筆に詰まった時は過去の自分の作品を見返し、「大丈夫、あの時も書けたんだから今日も書ける!」と自分で自分を励ましたり(ちょっと気持ち悪いですね……笑)。

しかし編集という仕事を与えてもらったおかけで、「ぜんぶ一人でやる必要はないんだ」と気づきました。今までは、思いついたテーマは全部自分で書く。むしろ「他人には取られたくない」なんて思っていた節も実はあるのですが、「このテーマだったら、彼女の方がもっとうまく書けそう」「彼女が書くこのテーマを読んでみたい」と思えるようになったんです。

撮影/大坪尚人

なんというか、ずっと自分にだけ向いていた矢印を外に向けたら、できることがぐっと広がり、ワクワクも増え、肩の力が抜けて楽にもなりました。少し綺麗事っぽいですが、仲間を素直に信頼、尊敬することができるようになると、結果的に成果が大きくなることも実感できました。これもシスターフッドの一部と思います。

If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.
早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け

アフリカにこんなことわざがあるそうですが、胸に沁みます。

ということで、今年編集を担当した連載も二つご紹介させてください。

まずは『韓国ドラマでキュンキュンしよう!』小澤サチエさん著)。これは本当に、まさに胸がキュンキュン、読んでいてただただ楽しい記事です。

アラフォー&アラフィフ女性特有の、韓国ドラマや俳優陣への称賛やマニアックな考察、思わずクスッと笑ってしまう心の声がユーモラスで描かれています。お休み中に楽しめるおすすめの韓国ドラマも一目で分かります。

そして小説『優しい嘘をひとつだけ』佐野倫子さん著)です。こちらもミドルエイジの女性の心に寄り添う作品になっています。とても優しい文体で、読んでいるだけで癒しを得られ、心のデトックスにもなるかと思います。

 
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