一時金は皇室からの「退職金」

2021年の皇室「眞子さんの結婚に揺れた秋篠宮家の長い1年」_img3

写真/JMPA

眞子さんは、皇室を離れる際に皇族に支給される一時金も受け取りませんでした。
一時金とは、皇室経済法に「皇族であった者としての品位保持の資に充てるため」と記されていて、支給額は内閣総理大臣らで構成する皇室経済会議で決められます。
金額は皇族の身位によって算出されます。眞子さんは内親王で天皇のめいであることから、1億3725万円が支払われる予定だったといわれています。

皇族は国民年金にも国民健康保険にも入れないなど、いろいろな制約があります。そのなかで、一時金は、いわばそれまでの皇族としての活動に対する退職金のようなものともいいます。

「一時金を受け取らないという選択は、眞子さんご自身の思いを反映したものだと思いますが、私は受け取るべきだったと思います。

お金を受け取らないことで国民の小室家に対する不信感を払拭しようとしたかもしれませんが、必ずしもそうはなりませんでしたし、一時金は元皇族の『品位保持』のためのものであり、まったく別次元のことだと思います」

 


これからは発信していく皇室に


今回の結婚を巡っては、眞子さんが指摘したように「誹謗中傷」も含む報道やネット情報があり、宮内庁のマスコミ対応やSNSのあり方についても課題を残しました。
儀式と一時金のことは、すんでしまったことですが、皇室も宮内庁も、常に国民に向けて丁寧な説明を続けることがいっそう求められるでしょう。

「またもやと言うべきか、今回も宮内庁のマスコミや世論への対応という問題が浮き彫りになりました。かつて上皇后美智子さまや東宮妃時代の皇后雅子さまもバッシングの対象になったこともありました。

いまの状況は、その時から変わっていないどころか、むしろ悪化しているかもしれません。英王室では、SNSで発信をしています。これからは『今、皇室はこんなことを考えていて、こういうことをやろうとしている』といった国民にとって必要と思われることをどう発信していくかを考える必要があると思います」

悠仁(ひさひと)さまの帝王教育


秋篠宮家の長男・悠仁(ひさひと)さまは、高校進学を控えています。どのようなご様子か気になります。

「今、中学3年生という多感な時期です。いろいろなことがわかってくる年頃で、進学のことやお姉さんの結婚問題もあり、ストレスも抱えていることでしょう。それをご両親の秋篠宮さまと紀子さまがケアして差し上げていると思います。

高校進学後は、将来の天皇としての心構えが形成される大事な時期になります。
秋篠宮さまはこれまでも、悠仁さまが幼少の頃から天皇陵や伊勢神宮への参拝などに一緒に訪れていました。こうした体験を通じて歴代天皇の業績を学びつつ、上皇陛下が実践されてきた『国民とともにある皇室』を時代の変化とともにどのようにイメージするのかが将来の課題になっていくことでしょう。
成長していかれる姿を静かに見守りたいものです」
 


●大久保和夫(おおくぼ・かずお)
毎日新聞客員編集委員。宮内庁を中心に、皇宮警察をはじめとする皇室関連の取材を続けている。皇室を通して日本と日本人について考えることを大きなテーマにしながら、70歳を過ぎても現役記者として活動している。

●聞き手
高木香織(たかぎ・かおり)

出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に、『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(こう書房)、『美智子さま あの日あのとき』カレンダー『永遠に伝えたい美智子さまのお心』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へ―』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、 『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。


取材・文/高木香織
構成/片岡千晶(編集部)


第2回「2021年の皇室「コロナ禍で皇室の未来を感じた愛子さまのご成年」」12月31日公開予定

 
  • 1
  • 2