IT大手のヤフーが、社員全員にAI(人工知能)スキルの習得を求める方針を決めたことが話題となっています。筆者はパソコン黎明期から社会のIT化を眺めてきましたが、今の雰囲気はパソコンの普及が始まった時期とよく似ています。AI化に対する社会の反応は真っ二つとなっており、このタイミングでAIをどう受け止めるのかで、10年後のビジネススキルは天と地ほどの違いとなっているでしょう。
ヤフーは2023年度までに全社員に対して再教育を行い、全員がAIを業務で活用できるようにする方針を固めました。
今後、アルゴリズム作成スキルを持つデータサイエンティストや、データを分析して業務に活用するデータアナリストを社内で養成していくそうですが、注目すべきなのはそこではありません。両職種に該当しない一般社員に対しても、実務でAIを活用できるスキルの習得を求めていくという部分がもっとも重要です。
ITというのは従来のテクノロジーとは異なり、社会のあらゆる場面でその技術を応用することができます。ソフトウェア自体を開発する技術はもちろん大事ですが、それと同じくらい、ビジネスの現場でいかにITを活用できるのかがカギを握っており、これに成功した企業は生産性を大幅に向上できます。
ヤフーの取り組みがうまくいけば、基本的に全社員がAIを使いこなせるようになり、多くの事業がAIベースで再構築されることでしょう。従来と同じ業務を圧倒的に少人数で実施できますから、余剰の人材は付加価値を生み出す新規事業に投入できます。同じ人数でより多くのビジネスが出来れば、稼げる金額も大きくなりますから、賃金の上昇につながっていきます。
同じくIT大手のGMOインターネットも、2022年度以降については、新卒採用をAIなど高度スキルを身につけた人材に限定する方針を決定しました。採用を減らせば総社員数も減少しますが、同社ではAIを使った業務の自動化を進めることで、少ない人数でも業務を実施できると見込んでいます。
現段階では先端的な企業に限った話題ですが、この動きは数年以内に確実に一般企業にも浸透してくると予想されます。ここで「AIで何か変わるの?」などとのんびりしたことを言っていると、10年後には相当な苦難が待ち受けている可能性が高いでしょう。過度に不安を煽るつもりはないのですが、あえてこのようなことを言っているのは、今の社会の雰囲気がちょうど30年前のIT黎明期とよく似ているからです。
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