先ほど競争がより複雑化し、激しくなっているという話をしましたが、一方で、社会のデジタル化が進んだことによって、一定のスキルさえ身につければ、長時間労働をしなくても相応の業務をこなせるようになってきました。独創性などより高い次元での成果を求める人は、自ら志願して激しい競争社会に身を投じればよいでしょうし、そうした競争を好まない人は、淡々と業務をこなし、私生活を大事にする生き方の方が幸福感を感じやすいと思います。
誰がどのような能力を発揮できるのか、先を読むのが難しい時代ですから、最初からゲームのルールを絶対視せず、いろいろなことにチャレンジさせる方向性を目指した方が、社会全体として得られる富は大きくなるでしょう。
ある仕事に対して、募集する人数よりも応募者の数が多ければ、そこで競争が発生するのは仕方のないことです。しかしながら、仕事に対して賃金が支払われる、いわゆるジョブ型の雇用が一般的になれば、その仕事に従事するために必要となるスキル(あるいは学歴)は事前に明示されます。
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その仕事に就きたいと考える人は、必要な学歴を得ていけばよいという発想になりますから、最初から同じゲームで全員が競争する社会とは違った価値観になっていくはずです。
諸外国では、現時点における個人の能力を見極めた上で、全体で何番なのかではなく、努力によってどれだけ能力が高まったのかを重視する教育方法が主流となりつつあります。体育についても、それぞれの運動能力に合わせて基準を設定し、どのくらい体力が向上したのかで評価が行われます。
何をするにも基礎学力は重要ですが、基礎学力を高めるためのインセンティブが、他人との相対的な位置関係だけで決まるわけではありません。自分で目標を設定し、その目標をどう乗り越えさせるのか児童生徒に考えさせた方が、新しい時代における人材育成としては、よりふさわしいのではないでしょうか。
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