「オミクロンの次」を生み出すリスクとは?医師が解説_img0
 

「ピークアウト」はいつか?

オミクロンの感染流行が日本でも広がっています。私の住むニューヨークでは一足先にピークを脱しています。ですが、年末年始のピークの際には、州内だけで1日に8万人以上の感染者を出す事態となりました。ちょうど入院診療にあたっていた私も、その厳しさを、身をもって感じました。

 

パンデミックが始まってから2年。私たち医療者はこれまでの経験により、診療に慣れも出てきた一方、患者さんにとっては初めての経験であることが多く、隔離中の孤独や重い症状からくる辛さをマスク越しに分かち合いました。

患者さんが流す涙は、私たち医療者にとっても辛いものです。時には、時間をかけて話を聞いたりもしました。医師の仕事は、治療薬を駆使して病気を治すようなイメージがあるかもしれませんが、時に私たちにできることは話を聞くことだけとなってしまう時もあります。「弱ってしまい自分でバナナも食べられなくなってしまった」と涙を流しながら伝えられ、食事を手助けする日もありました。

日本でも感染者の数字が大きくなり、「何をやっても無駄」という諦めの発想や「ただの風邪」「インフルエンザと同じ」といった発言が目立つようになりました。それはある意味では仕方のない反応なのかもしれません。

人は危険な状況や予期せぬ状況に直面した時、精神的な防御反応として「正常性バイアス」が働いてしまうことがよく知られています。例えば、災害などに際して、自分に都合の良いデータのみを拾ってリスクを低く見積もってしまう、というような思考の偏りです。現状のコロナのデータが示すものを「風邪」と捉えてしまうのも、まさに都合の良いデータだけを抽出した結果であるのは明らかです。