楽観視できるようなデータの存在


このように、危険な状況に直面した際、「楽観的なシナリオ」を考えることは、心のバランスをとる上で大切な反応なのだとも思います。しかし同時に、判断を誤らせることに繋がる恐れもあります。逆に、悪いシナリオに目を向けることは自分の快適レベルを下げることになり、心地の良いものではありません。両者の可能性を考えておくことが、間違いの少ない判断力を維持する上で重要となるでしょう。

未来は、不確定要素によって大きく左右されます。「オミクロンはあと2週間で収束する」というような断定的な物言いは、不確実な未来に対する不安な気持ちを心地よく埋めてくれるかもしれませんが、それこそが正常性バイアスを補強してしまうものにもなりうるでしょう。

 

たしかに、オミクロンに対しては、楽観視させてくれるようなデータが出てきているのも間違いありません。

米国CDC(疾病予防管理センター)は、1月21日に3つのオミクロンとブースター接種に関するデータを公表しています。

そのうち、一つの研究(参考文献1)では、コロナワクチン2回接種後6ヵ月以上経過した人での入院予防効果が57%まで低下していたのに対し、ブースター接種後は90%まで回復していたという結果が示されています。また、救急外来への訪問を減らす効果は2回接種後では38%でしたが、ブースター接種後では82%まで回復していました。これらのことから、ブースター接種により、オミクロンに対しても入院を防ぐ効果や症状を軽くする効果が大きく期待できることがわかります。

もう一つはJAMAという医学誌に掲載された研究(参考文献2)です。この研究では、COVIDを発症する確率を3回接種と2回接種とで比較し、発症が66%減少していることを示しています。