「高齢化社会」「人生100年時代」という言葉を目にしたとき、皆さんはどのようなイメージを抱きますか? おそらく、明るい未来像よりも「どうやって生きようか」という不安のほうを強く感じるのではないでしょうか? 

メディアが不安を煽りがちなのも一因でしょうが、高齢者の実情を知らないためにネガティブなイメージが増幅しているという側面もあるでしょう。そんななか、高齢者の生き方の一例を知ることができるのが、田原総一朗さんと下重暁子さんの初対談集『人生の締め切りを前に 男と女、それぞれの作法』です。

80歳を超えても現役で活躍されているお二人の発言は良い意味で「規格外」。ステレオタイプな高齢者像を見事なまでに打ち崩してくれます。とはいえ、「自分にもできそう」と思わせる親近感もあり、読んでいくうちに元気をもらえるでしょう。

定年や老後を必要以上に恐れないためにも、本書に目を通してみてはいかがでしょうか? 今回はその一部をご紹介いたします。

 

 

ひとりになる恐怖を克服するには?


配偶者に先立たれた後の男女の違いについて語り合っていた田原さんと下重さん。2004年に奥さまを亡くされ、悲しみの淵に沈んだという田原さんは、下重さんに「将来ご主人が亡くなったら落ち込むことになるんじゃないの」と問いかけますが、若い頃から孤独が平気だったという下重さんは「それは多分ありません」ときっぱり。さらに下重さんは、ご主人との間には家事や家計の分担がなく、独立採算制の夫婦関係を続けていることを告白しました。

田原 それじゃ、ひとり暮らしと一緒じゃないですか。

下重 そうです。自分がひとりでいるのと同じように暮らせないなら、私は他人と暮らしません。それは最初からそう決めていました。そもそも、私には他人と暮らす生活を続けていく能力がないことがわかっていますし、向こうも知っていますから。

 

田原 それが凄いよね。

下重 どうしてですか? できないのだからしょうがないじゃないですか。

田原  やっぱり二人で暮らすなら、お互いに妥協しあうのが普通だと思う。

下重 妥協ではなく、この人は自分と別の人なのだからと認めます。むしろ二人で暮らして初めてほんとうの自立が試される。まあ、多少諦めもあるかな?

田原 そういう関係なら、どちらかが先に亡くなっても、お互いが妥協して依存している夫婦よりはショックが少ないかもしれない。ただ、それを皆にやれと勧めるのも難しい。ひとりになるのが怖いと思っている人にアドバイスはありますか?

下重 ひとりになってみることです。

田原 怖くても?

下重 そうです。とにかくひとりになってみるといいと思います。実は、ひとりになると怖いだろうと思い込んでいただけだ、とわかるはずです。