フランス人はDIY、日曜大工にあたるブリコラージュが大好きだ。街中に専門店もたくさんある。蚤の市で古い家具を手に入れてリメイクする、なんて話はよく聞く。モノ作りだけでなく、古いアパルトマンは水回りトラブルなども多いため、頻発する家問題を自分で修繕対処することもまたブリコラージュというらしい。

 

せっかくなので散歩も兼ねて、パリ市庁舎の隣にあるデパート、BHV(ベー・アッシュ・ヴェー)まで繰り出すことにした。地下がブリコラージュ専門フロアで、品揃えも豊富。よく日本の東急ハンズやロフトに例えられているのも頷ける。同じパリのデパートとはいえ、ギャラリー・ラファイエットやプランタン、ボン・マルシェに比べてずっとハードルが低い。

ギヨームがじっくりと工具や材料を吟味しているなか、私は細々とした用途不明のパーツやら、美しく陳列された照明器具の合間をさまよってわくわくしていた。

――壁にもレコードを飾れるようにしたら、オシャレかも。

木材が並ぶ倉庫のようなコーナーで、細い角材を手にしてみる。大きな地震の少ない国だから、壁に打ち付けるだけでレコードを飾る台になるのでは?

名案に気をよくして角材を手にギヨームの元に戻ると、すらりと背の高い女性と楽し気に盛り上がっているところだった。スラング交じりの早口を交わす二人は、私には入れないバリアに覆われているようで、近づくことに躊躇してしまう。

 

距離を保ってぽつんと佇んでいると、ギヨームが気付いて手招きした。

「こちら、同僚のシャルロット。彼女は愛莉」

紹介され、お互いに「ボンジュー」と挨拶を交わす。

小さな顔にメリハリのある身体付き。ただでさえ細長い脚に踵の高いブーツを合わせていて、並ぶとシャルロットの腰の位置は私の胸のあたりにあった。同じ人類とは思えないほどのプロポーションの違いに、自分の胴長土管体型が恨めしくなる。

――綺麗な人だなぁ。

再びまくしたてるような勢いでギヨームと話し始めたシャルロットをちらちらと観察し、羨ましくてならない。