ここで、1年後に物価が2%上昇すると多くの人が予想する状態になったと仮定しましょう。もし本当に物価が2%上がった場合、AさんがBさんから返済を受けた時点で、1年前には100円だった商品が102円になっているはずです。このタイミングで利子1円を加えた101円を返済してもらっただけでは、Aさんは1円分損してしまいます。もし物価が上がると皆が予想しているのなら、Aさんは、レンタル料1%に加えて、物価上昇分の2%を加えた3%を利子として要求するはずです。
こうしたメカニズムが社会全体で発生するため、物価が上がると金利もそれに連れて上がっていきます。金利には長期、短期と様々な種類があり、上がるタイミングも様々ですが、全体的に物価が上がれば、最終的にはすべての金利が上昇することになります。
このところ物価上昇が顕著になっており、日本でもインフレ(継続的な物価の上昇)が進むのではないかという意見をよく耳にするようになりました。日本が本格的なインフレになるのかはまだ分かりませんが、海外でインフレが進んでいるのは事実です。私たちが普段、購入している商品の多くは輸入によって成り立っていますから、海外で物価上昇が進めば、日本国内にも波及する可能性はそれなりに高いでしょう。
日本はこれまでデフレと低金利が常態化していましたから、一部の専門家は日本では金利の上昇は起きにくいといった説明をしています。しかし、経済の原理原則として、物価上昇が続いた場合、どこかのタイミングで必ず金利は上がります。国によって金利が物価に反応しやすい、反応しにくいといった違いはあると思いますが、原則として、物価と金利はセットになっていると考えてください。
固定金利でローンを組んでいる人は、金利が上がっても返済額は同じですから、インフレになるとむしろ大きな利益を得られるでしょう。一方、変動金利の場合、金利が上がると返済額が増えてしまいます。
繰り返しになりますが、今のところ変動金利に影響はありませんから、変動金利で住宅ローンを借りているからといって、慌てる必要はまったくありません。ただ現実問題として、物価上昇リスクについて考えざるを得ない時代が到来しつつありますから、金利は上がらないだろうという過度な期待は禁物です。
もっとも、物価が上がるということは、最終的に不動産価格も上昇することを意味しています。しかしながら、自己居住用に物件を購入しているケースでは、家を手放さない限り、売却益を得ることはできません。金利が上がりそうな状況になった場合、とにかく支出を抑制し、返済原資を確保することを優先してください。
本コラムでは、今後も必要に応じて、物価動向についてお知らせしていきますが、皆さんも日々の生活において、今まで以上に物価に対して敏感になった方がよいでしょう。
前回記事「「人流抑制より人数制限」⁇ 日本の政治で“専門家の意見”が正しく機能しないワケ」はこちら>>
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