ギヨームの女友達が泊まるという夜、私もまたギヨームのアパルトマンにやってきた。「友達とは別々の部屋で寝るし、お互い恋愛感情なんてないから」と軽くあしらわれたものの「やっぱり心配」と食い下がると、

「それじゃ愛莉も泊まりに来る? 気を使わせちゃうかもしれないけど、彼女にはソファベッドで寝てもらって、僕らは寝室で一緒に寝よう」

と、あっさり提案されたのだ。

 

「わがまま言って、ごめん」

玄関の扉から顔を出したギヨームに開口一番で謝ると、かぶりを振られた。

「いや、僕こそ悪かった。そこまで不安にさせるなんて思わなくて。パリは宿泊代も高いし、頼まれたら受け入れるのが普通っていうか。でもこれからは女友達は泊めない。約束するよ」

しょぼくれた犬みたいな顔をするギヨームが愛おしくて、思わず抱きついていた。「ありがとう」を伝えながら、胸元から香るあの湖みたいな匂いに頬が火照る。

「これ、ミニプレゼント」

照れ笑いで先日ソユンと発掘したレコードを渡すと、ギヨームは目を丸くした。

「『髪結いの亭主』のサントラ? よく見つけたね、ありがとう!」

有無を言わせずチュバチュバッとキスをされ、黒々とした髭が痛い。それが嬉しい。

「髭、ずいぶん伸びたね」

「ここのところ忙しくて……髭長いの嫌い? 剃ったほうがいい?」

濃い眉をきゅんと寄せ、もっと情けない表情になるギヨームをしみじみと眺める。

「今も悪くないよ」

つま先立ちで、髭でもじゃもじゃの頬にちょんと唇をぶつけた。