「父がひとりで死んでいた」

なかなかにインパクトのある言葉です。
これは、2021年12月に発売された如月サラさんの著書のタイトルでもあるのですが、2021年1月に熊本市内にある実家で、如月さんの父(84)が孤独死していたことから始まる、約1年間のことを記した一冊です。

 


母親の認知症が発覚。実家にひとり暮らしになった父


25歳の時に実家を離れて上京し、出版社で女性誌の編集者として活躍していた如月さん。離婚などを経て50歳で大学院の修士課程に進学。長年勤めた出版社を辞めて、学業に専念しました。修了後はフリーランスのエディターとして活動を続けてきました。実家に暮らす両親は健在だったのですが、その当たり前の日常が崩れるきっかけになったのは、2020年夏頃に発覚した、母(82)の認知症でした。熱中症で倒れたことがきっかけで長期入院し、父はひとり実家で暮らすことになったのです。

 

「母が認知症になってしまったことのほうが恐ろしくて、病院の手配や認知症について調べることなどに気を取られていました。新型コロナウイルスの感染拡大で東京に住む私が熊本に行きづらい状況で、母の主治医との電話も2ヶ月に1回程度。『母はどうなるのだろう?』『家に戻れるのだろうか?』などとわからないことばかり。父にも『ママはいつ退院してくるの?』とばかり言われ、混乱していました」

父は母の入院に納得しておらず、如月さんと話をすると言い合いになってしまうため、連絡する頻度も減っていき、母の入院費を病院に支払ってもらうための月1回の連絡のみとなっていました。