ほとんどの人が、仕事で成功し、良好な人間関係を構築したいと考えています。ところが、同じような能力を持っていながら、仕事や人間関係、投資がうまくいく人と、そうでない人に分かれてしまうというのが現実です。

 

この話は、個人や組織だけでなく国全体にも当てはめることができます。同じ経済対策を実施しても、それがすぐに効果を発揮する国とそうでない国に分かれます。残念なことに日本は後者なのですが、なぜこうした違いが生じてしまうのでしょうか。

同じ能力であるにもかかわらず、大きな差が生じてしまう最大の理由は、思考回路、つまり物事に対する基本的な考え方の違いです。

筆者は以前、経営コンサルタントをしていたことがあり、数多くの組織とそこで働くビジネスパーソンたち見てきましたが、成功する組織や人には明確な特徴が見られます。それは、うまくいくやり方を体系化し、着実に実行していくということです。こうした人や組織は、一発で問題が解決するような安易な方法は決して求めません。

多くの人が従事している営業という仕事を例に取ると、営業で一定の成果を上げる方法というのは、過去の経験則からほぼ確立していると考えて良いでしょう。

むやみに営業をかけても注文が取れないのは当たり前ですが、一方で、ある程度の数をこなさなければ潜在顧客を開拓することは不可能です。顧客ごとに状況は様々ですから、数回の提案で前に進まない案件は、ゴリ押ししても成約する可能性が低く、思い切って次の案件に移った方が賢明です。さらに言えば、利益の大半はリピーターから得られることがほとんどですから、顧客になってくれた相手は特に大事にしなければなりません。

まずは数をこなして潜在顧客を確保し、相手のニーズを見極め、リピーターを狙うというのは、営業で成果を上げる人にとっては、当たり前の常識であり、このやり方を愚直にこなしていけば、誰でも(人によって得意不得意はあるものの)一定の成果を上げられるはずです。

しかし、多くの人が、この「当たり前」を実践せず、一気に売上高を拡大する方法や、ラクに営業できる方法ばかり考えてしまい、結果として成績が上がらないという状況に陥ってしまいます。しかも困ったことに、当たり前のやり方を説明すると「そんなことは誰でも知っている」と反論する人が多いのです。

営業や人事など個別スキルだけでなく、組織全体の方法論についても同じことが言えます。90年代以降、全世界的にITシステムが普及し、多くの事例が積み重ねられました。これによって、ITをビジネスに活用し、成果を上げるための方法論は、ほぼ確立したといって良い状況です。

ところが一部の組織では、依然としてIT化への抵抗感を持っており、システムの導入を拒絶しています。確実にうまくいくことが分かっているにもかかわらず、こうした組織では、IT化しない言い訳ばかりを繰り返しているのです。

 
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