「仕事も、子どももって、ワガママかな?」
「ワガママじゃないよね。男なら」
現在配信中のABEMAオリジナルドラマ『30までにとうるさくて』。「台詞が、とにかく刺さる!」とSNSを中心に大きな話題を集めています。
セックスレスに精子バンク、ステップファミリー
選択肢の先の悩みを描く
本作は、東京で暮らす29歳独身女性4人が織りなす人生の物語。恋に、キャリアに、性に、友情……さまざまな悩みにぶち当たりながらも、たくましく生きている彼女たち。主要キャスト4人の性格が、バラバラなところもいいんですよね。
さとうほなみさん演じる美山遥は、婚約者とセックスレスに陥っていたバリキャリ女子。彼女の心の葛藤は、第2話「レスだけど結婚ってアリ?」で詳しく描かれていました。婚約者の長島奏多(堀井新太)は、真面目で優しいけれど刺激がない。その隙間を埋めるために、会社の同期・鎌田知也(柳俊太郎)と一夜を過ごしてしまうんです。「レスだから仕方ない!」と言ってしまえばそこまでですが、長島は完全なる被害者ですよね(最終的に、浮気がバレて婚約破棄に……)。
そして、PR会社の敏腕社長・三浦恭子(山崎紘菜)は、子宮系の病気が発覚したのをきっかけに、選択的シングルマザーになることを決意。「仕事が恋人」と言っていたのに、子どもが産めなくなるかもしれないと思うと、母になる未来を夢見てしまう。“結婚はしたくないけど、子どもがほしい”恭子を通して、日本の精子バンクの実情が明らかになっていきます。
ゆるふわ秘書・藤沢花音(佐藤玲)は、年収2000万円以上の男性を探すために奮闘する婚活女子。狙いを定めていた上場企業の社長・高村(渋江譲二)に中学生の娘がいることが分かり、関係を継続していくべきか悩んでいます。ステップファミリーになる難しさにまで触れてくるのか……! と驚かされました。『30までにとうるさくて』は、本当にさまざまな問題を追及しているんですよね。女性のパートナーと暮らす佐倉詩(石橋菜津美)を通しては、同性カップルが偏見に挑んでいく姿が描かれています。
女性にとって、“30歳”はひとつ目の大きな節目なのではないでしょうか。もちろん、成人を迎える20歳も気持ちの変化はありました。けれど、ハタチの頃は年齢を重ねることへの切実さがなかった。とくに、未婚の人は、“30までに”結婚しなければ……と焦って、花音のように婚活に勤しむ人も多いのではないでしょうか。「結婚よりも、仕事が大事!」と思っていても、子どもを産むリミットを考えると「このままでいいの?」と立ち止まるのが、30歳。
もしかしたら、29歳がいちばん焦りを感じる年齢なのかもしれませんね。30歳を迎えたら、“30までに”という焦りが解けて、案外スッキリするような気が。本作のタイトル『30までにとうるさくて』は、周囲に“30までに”とうるさく言われているように見えますが、実際いちばんうるさいのは、自分の心の声なのかも。
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