「ブーメランです、言葉は。すべては自分に返ってくる。何を見て、何を発するのか。アナタは今、どんな言葉を心に溜め込んでいますか?」
7歳までをイランの孤児院で育ち、8歳で来日してからはホームレスさえも経験し、差別やいじめにも遭った過去を持つ、俳優・タレントのサヘル・ローズさん。著書『言葉の花束 困難を乗り切るための“自分育て”』の冒頭で綴られるのは、過酷な環境下で心ない言葉に傷つけられてきたサヘルさんだからこその、鋭い問いかけでした。

人を救うこともあれば、人を奈落の底に突き落とすこともある“言葉の力”。サヘルさんは本書の中で、身寄りのない自身を家族として迎えてくれた養母、フローラ・ジャスミンさんと過ごした日々を回想しながら、“言葉の力”を正しく使えば、どん底の人生だって明るく照らすことができる。そんなことを教えてくれます。今回は特別に、母・フローラさんが娘・サヘルさんに贈った“言葉の花束”から、一部抜粋してお届けします。

 


人を許すことを学びなさい


フローラが私を養子に引き取ったときから、私に言い続けてきた言葉があります。

【人生には敵も味方もない】

「サヘル、いい? 絶対にイラクを憎んでは駄目。 
大人になったら自分でイラクへ行きなさい。そして彼らの生活を見てきなさい。イラン・イラク戦争のとき、戦争によって孤児になってしまった人たちに会ってきなさい」と。

戦争は誰かを敵にして、味方を作ろうとする。でも戦争は全員が被害者。敵も味方もない、みんなが犠牲になっているだけ。いつも犠牲になっていくのは一般市民。そして時代に翻弄されていくのも生き延びた子どもたち。だからあなたは【憎む感情を捨てなさい。人を許すことを学びなさい】と、この言葉はサヘル・ローズの生き方の指標です。

 


悪口や陰口は、あなたの表情を醜くしてしまう


中学時代にいじめられていた当時はプライドが邪魔して相談できていなかったのですが、ひと山越えて素直になれたときに、相談したことがあったんです。実はいじめられていて苦しかったと伝えたときのフローラからの諭し。

「【サヘル、いじめられているからといって、相手を憎むことをやめなさい】それにサヘルのその可愛い口から、他の人の悪いことを聞くのは嫌よ。悪い言葉や相手がいないところで他者の話をしたり、その人の悪いところを、たとえ真実だとしても言い続けたら、それがサヘルの習慣になってしまう。いつもそうやって誰かの悪いところばかり言う口になってしまう。それは【結果的にはアナタの表情を醜くしてしまう】。

素敵な口をもらったんだから、素敵な言葉を紡ぐ口になりなさい。素敵な物を見る目になりなさい。そうすれば、どんどん綺麗な目になれる。綺麗な表情になれる。

人というのは外見じゃない。いい中身を磨いていきなさい。外見がどんなに美しくても飽きられてしまう。本当に中身から美しい人は、逆にどんどん美しくなっていくし、一緒にいる人もその魅力に惹かれていく。【肝心なのは中身の厚さ】」

【中身から自分をつくっていきなさい】
この教えをすごく大切にしています。