健康で友だちもいて、成績も悪くない。不登校とは無縁だと思っていた我が子がある日突然不登校に──子育て真っ最中の人にとっては背筋が凍るような話だと思いますが、これは決してフィクションなどではなく、実際に起こり得ることなのです。

ただ、そのような局面に陥っても焦りは禁物。不登校を克服するには、根本的な原因を把握し、落ち着いて適切な対処を行うことが肝心です。その具体的なノウハウを綴ったのが、不登校コンサルタントとして支持を得ているランさんの著書『子どもが不登校になっちゃった!』です。

ご自身も娘さんの不登校に悪戦苦闘したというランさんだけに、随所に悩める親御さんへの気遣いが感じられ、不登校に直面していない人でも本書の内容は励みになるでしょう。今回は、実用的ながらも温かみを感じる本書から一部を抜粋いたします。

 


不登校になる前から不登校は始まっている


実は、不登校には、子どもの自己肯定感の低さが関係しています。

 

自己肯定感とは、「自分に価値がある」「自分に満足している」というような、自分の存在意義や価値を肯定できる感覚のことです。今の子どもたちは、課題、部活、塾、習いごとなど、やるべきことがたくさんあります。

そして、子どもは、やるべきことに向き合うたび、
「〇〇しなければならない。でも、できない」
「〇〇しなければならない。でも、やりたくない」
というように自分の感情と戦うことになります。

こうした感情との戦いの末、子どもが自分の気持ちを優先し、「できない」とか「やらない」という選択をすると、結果的に大人からは認めてもらえず、「どうしてできないの?」「なんでやらないの?」などと言われます。

それを繰り返すうちに、「自分はダメな人間なんだ」と思うようになっていきます。このような日常の小さな「トライ&エラー」を繰り返すことによって、徐々に子どもは自信を失い、何かトラブルが起こった時、「もう無理だ!」と耐えることができなくなるのです。

子どもの自己肯定感が下がっていくプロセスは、日常の小さなストレスの積み重ねなので、一般的に親は気づきません。ですから、親からすると不登校は、急に始まったように思えますが、子どもの心理から見てみると、「不登校になる前から不登校は始まっている」ということが言えるのです。