働き方が自由になってきたいまこそ挑戦してみたい「二足のわらじ」。でも一歩目って、ハードルが高いものですよね。そこで「複業に向けて行動している先輩」にインタビュー。一歩を踏みだした瞬間と、その新しい世界を、教えて二足のわらじさん!

 

ミュージカル・演劇ライターの町田麻子さん。舞台が好きな方ならば、劇場で手にしたパンフレットや演劇関連雑誌で彼女の記事を一度は読んだことがあるはず。造詣が深い、という言葉では表せないほどの知識と情熱で、舞台の魅力を伝え続けています。そんな彼女が、再び大学生になったのは2018年、38歳のとき。東京藝術大学音楽学部楽理科で、20歳近く年下の「同級生」と音楽の勉強をスタートさせました。「人よりできることが少なすぎて、少しはマシに出来ることに逃げつづけてここに至りました」と笑う町田さん。その経緯と葛藤、そして二足のわらじで目指す場所とは?

 


【町田麻子さん①】


「社会人失格」という言葉がありますが、私は22歳の6月に早くもそれを痛感しました。

新卒で入り、2か月半で辞めた大手舞台制作会社を含め、お世話になった会社は6社。演劇ライターとして独立したのが2012年のことですから、会社員生活約10年で6社と言えば、謙遜でないことがお分かりいただけるかと……。

一つの場所に長くいられない特性、というか欠点は、言い訳を許していただけるならば、幼少期の激しい転校生ライフが影響しているような気がします。父の転勤でロンドンに生まれ、パリ、日本、フランクフルト、再びロンドン、小3で本帰国してからも国内での転校生活。幼少期に海外に住むのは素晴らしい経験だと承知していますが、それにしても頻繁に転校しすぎて、いつしかついた「リセット癖」。

この「リセット癖」、真面目で小心な自分なりの処世術だったのですが……これが、社会人としてはなかなか厄介な癖でした。

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演劇ライター町田さんが、38歳で東京藝術大学の学生になるまで
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