保育の現場がいじめのような状態になってしまう切実な事情

 

──業績悪化はやむを得ないとしても、ちゃんと対策があるのに講じないのは問題ですね。

特にサービス業で顕著だと思います。サービス業という意味では保育の現場でもコロナ禍ならではの問題が生じています。それが二つ目の傾向で、保育園で働く人たちが保護者の「休園しないで」という声に押され、コロナ感染の恐怖を感じながらも働かざるを得なくなっているパターンです。子どもが家に居ると仕事を休まなければならず、収入にも影響しますから保護者側も切実なのですが、それが保育士の方々に無理を強いる結果になっている。子どもが家に居るならテレワークで仕事すればいいという声もありますが、実際には難しかったりします。

 

──保育士と保護者のどちらも切実なだけに、なかなか突破口が見えないですね。

実は対策はちゃんとあるんです。まず、保育現場はコロナ感染が広がりそうなら休園や運営の縮小をする。行政はその分の運営費もそのまま園に支給しますので、もし休んでも保育園で働く人の賃金は全額補償できます。一方で、保護者の職場は小学校休業等対応助成金を利用して、保育園に預けられず子どもの面倒をみるために休んだ人の給料を補償すればいいのです。厚生労働省に申請すればもらえるのですが、なぜか利用しない経営者が多い。保育士も家庭で育児を担っている人(もちろん男性もやるべきです)もその多くは女性ですから、結果的に女性にしわ寄せがいくかたちになっています。

──結局、経営側の怠惰がいじめのような状況を生んでいるのでしょうか?

経営者が助成金を申請しないのは、手続きが面倒くさいというだけでなく人員の問題もあると思います。職場をギリギリの人数で回しているので、一人でも休ませるわけにはいかないといった具合に。でも、それでコロナ感染が広がって社会機能が停止してしまっては本末転倒ですよね。今は非常事態ですから、まずは企業の利益は後回しにして従業員の命や健康を優先すべきではないでしょうか。そのための支援制度もありますし。でも実際はそうなっていないのがおかしいと思います。