冬ドラマは、ヒロインをめぐる恋の三角関係が乱立していましたよね。GP帯だけでも、『ファイトソング』(TBS系)、『ムチャブリ! わたしが社長になるなんて』(日本テレビ系)、『ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇』(フジテレビ系)と三作のドラマがバチバチのバトルを繰り広げていました。本稿では、それぞれの恋路を振り返りながら、選ばれた男性の共通点を探していきたいと思います。


『ファイトソング』
「少し嫌だなって思いました」強いヒロインの心を動かしたのは?

 

まず、岡田惠和さんが脚本を担当した『ファイトソング』。木皿花枝(清原果耶)が最終的に選んだのは、不器用なミュージシャン・芦田春樹(間宮祥太朗)でした。同じ児童養護施設で、“家族”のように育ってきた夏川慎吾(菊池風磨)は、「ごめんなさいって言うしかないよ……」と振られてしまう。慎吾と一緒に過ごした時間が長いからこそ、恋人として見ることができないんですよね。第9話のこのシーンは、あまりにも切なかったです。

 

筆者は正直、花枝はどちらも選ばないのでは? と思っていました。聴神経腫瘍の手術をしたことにより、花枝は完全に聴力を失ってしまった。すなわち、芦田が作った歌を聴けなくなるということ。それは、花枝にとって何よりもつらいことだろうから。だからといって、慎吾にいくとは思えなかった。

さらに、花枝は強すぎるくらいに強い女の子です。一度決めたことは、そう簡単に曲げない。心のなかにある芦田への未練を、必死に見ないようにしていました。児童養護施設の“家族”たちは、強がりな彼女を心配しつつも、厳しい言葉をかけることはしなかった。

近くにいるからこそ、言えないことって、きっとたくさんあるんですよね。花枝が“強く在ろう”と頑張っている姿を見てきたから、そう簡単に「間違っている」と言うことができない。しかし、芦田はあっさりと言ってのけたのです。

「花枝は、強いというか頑ななんだなって思いました。自分が決めたことを、絶対に変えない。何があっても。それは、強さでもあるけど、そこから動けない、それしかできない弱さでもあるんじゃないかな? そういうところ、少し嫌だなって思いました」

この言葉を、目の前で聞いていた慎吾の表情にも、グッとくるものがありました。「こいつ、花枝の苦しみも知らずに何を言いやがる!」という怒りの気持ちと、「俺には言えないな……」と敗北を察してしまった戸惑いが混じりあっているような。

そして花枝は、温かい“家族”から自立をして、芦田とともに歩んでいくことを決めた。芦田の厳しくも優しい指摘が、彼女の心を動かしたのではないでしょうか。