アソースメレを訪れて


「スタッフの今日のコーデ」の私服姿にファンの多いエディター松井陽子さん。記事の中でも松井さんのスタイリングにもよく登場する「もはや体の一部のよう」という最愛のファッションアイテムを、毎月クローズアップしてお届けする連載企画。
愛するものの魅力を掘り下げるべく、松井さんがデザイナーやディレクターといった物づくりのバックグラウンドを訪問し、作り手の思いや、そのものが生まれた背景に迫ります。

今回訪れたのは、アソースメレ。ディレクションを務める大谷繭子さんにお話を伺いました。

美しい色、そして心地の良い素材感。美しい立体感が顔まわりをパッと華やがせてくれるアソースメレのストール。ファンの方もきっと多いですよね。

私もその一人です。アソースメレに出会って、必ずしもポジティブではなかったストールへの思い込みが見事に一掃されました。

繭子さんとおそろいでまとっているのは、カシミヤのストール。真夏以外、時には真夏にも大活躍しています。繊細な色味も特別感を呼び込んでくれます。

連載2ブランド目に訪れたのは、アソースメレのディレクションを行なっている大谷繭子さんと、糸の生成から商品が完成されるまでの生産を管理されている長谷川さん。エクセプショナルな一枚が出来上がるまでのお話を伺いました。

 


見たことのないストールが
ワードローブも変えてくれました


ストールが私のワードローブの最前列に並ぶようになったのは、じつはここ3年ほどのこと。結構最近なんです。それはとても単純で、それまでしてみようと思ったことがなく、感覚的に馴染みがなかったから。

ある時の撮影でスタイリストさんがコーディネートに合わせていた黒のリネンストールを見た時のあのインパクト……! 私の心はすっかり奪われました。しっかりと厚みがあって、なのにとてもしなやか。たっぷりとした風合いや、周囲をぐるりと囲むフリンジのあしらい、そしてシックな黒という色……そのすべてが新鮮でした。

 

完全なる一目惚れでしたが、その一枚は確実におしゃれを広げてくれました。大きめのカゴバッグにポンと乗せて、仕事の日や友人と会う時に、そしてサーフトリップにも。どこに行くにもいつも一緒。そんな特別な存在になったのです。

そして、冬に新たに購入したのがカシミヤのストール。甘い編み目でふんわりと伸びやかに体を包むその風合いは、「これはストール? それともセーター?」と、もはや正解がわからないようなタッチ。未だかつて味わったことのない心地の良さに惚れ惚れ!

2022年のAWでは、三角形のストールも登場。ストールというよりはスカーフのようで、コンパクトゆえ身に着けやすく、アレンジも簡単。そしてとてもフォトジェニック!使い勝手の良さを重視した同素材のグローブは、指先はカットされていて、ロング丈で手元をしっかりと温めてくれます。2つおそろいで合わせると、着こなしの小粋なアクセントに。

そう。アソースメレのストールは、それまで私の中にあったストールへの思い込みを見事に一掃してくれたのだと思います。

思い込みとは、スタイリングのイメージに合うストールってそう多くはない、ほとんどない、ということ。なんとなくほっこり見えたり、バランスが難しくて扱いづらかったり。デザインが気に入って以前に買ったラメ入りのものは、実際に巻くとちくちくしてかゆくなってしまい、結局ほとんど身に着けることがなかったという残念な記憶も。お洋服よりも素肌にダイレクトに接するストールは、可愛いだけでは選べないということを身をもって知っていたので、ますます「私には難しいもの」になってしまったのです。

その思いはじつは私だけのものではなく、そう思っていた女性は少なくなかったのかもしれません。そんなストール観を見事にオーバーライトしたのがアソースメレであり、ディレクターの大谷繭子さんだったのです。
 

身に着けるだけで華やぐような、
インパクトのあるものを

ディレクターの大谷繭子さん。この日は美しいブルーのストールを。ポコポコと表情豊かなワッフルのようなストールは、タテ方向とヨコ方向で糸の性質を変えることでこの風合いを生み出しているのだそう。顔まわりの美しい立体感が、デニムのカジュアルスタイルをリッチな印象に。とっても素敵です!

繭子さんと知り合ったのは、まだディレクターをお務めになる前のこと。ランチをご一緒したのですが、あっという間に時が流れてしまったのをとてもよく覚えています。優しくて、ふんわりと温かいお人柄にすっかりと魅了されました。

もともと雑誌のエディター&ライターをされていて、その時に磨かれた洞察力や、時代を感じ取るセンスがアソースメレのディレクションにもいかんなく発揮されているのだと思います。

繭子さんが携わるようになって、本格的に展開が始まったのが2018年のSSシーズン。それからというもの、雑誌に掲載されない月はないくらい、アソースメレのストールは世の女性たちにとっての確かな存在になったのだから!

「世にあるストールはコンサバティブなものが多くて、つけたいと思えるものがないんです」と最初のミーティングで繭子さんはそう話したのだそう。「1つ身に着けるだけで気分が華やぐような、インパクトのあるもの。そして、スタイリングにちゃんと合うもの。サイズ感、色で際立たせよう、と方向性を決めました」。
 
そして、もう一つ。「触った時に心地がいいということも絶対。少しでも違和感があると身につけなくなってしまいますよね。私自身肌が弱いので、ちくちくしたり肌に引っかかるようなものだと、どんなに可愛くても登場回数が減ってしまっていたんです。ですので、原料へのこだわりはブランドのアイデンティティとしてあります。気持ちを高揚させ、自分の内なる心と向き合った時に『あ、いいな』と直感的に思えるものを展開していこう、そう常に話をしています」と繭子さん。
 
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