決して安い買い物ではない不動産。絶対に失敗したくないですよね。でも、不動産業界のことをどれだけ知っていますか? 4月5日からNHKのドラマ10で放送されている『正直不動産』。『クロサギ』などで知られる夏原武さんが原案を務めており、不動産業界のウラオモテや情報格差を描いていると話題になっています。
主人公の永瀬財地は、吉祥寺の「登坂不動産」で売り上げNo.1の凄腕営業マン。今日もアパート建設の契約に不安を抱く老夫婦へ、メリットを親切丁寧に説明しています。
見事、契約成立にこぎつけた永瀬のトークに、新入社員の月下咲良は感動。「不動産営業のエースは、顧客を騙して欺いて営業成績を上げるイメージだった」けれど永瀬は、顧客に誠実に向き合い、時には不利になることも包み隠さず伝えて成約にこぎつけているように見えます。「まさにカスタマーファースト」と尊敬を込めて言う新入社員。しかし永瀬はとんでもないことを言い放ちました。
そう、身なりを整えるのも感じのいいトークをするのも、顧客のためじゃなく、すべては売るため。建設したアパートの家賃が下がるリスクがあること、契約書には中途解約を可能とする条項が含まれていたことなどを、永瀬は顧客に説明していませんでした。
「この業界には"千三つ"という言葉がある」と永瀬は言います。新入社員が「家がほしいって話が千件あっても契約に至るのは三件」の意味だと答えますが、永瀬いわくもともとは違う意味なのだそう。
「正直者がバカを見る。嘘ついてなんぼのイカれた世界。それが不動産業界だ」と永瀬は言い捨て、去っていきました。
一週間後、成約した土地の地鎮祭に向かった永瀬は、その土地に不気味な石碑があることに気づきます。
これを見て客のテンションが下がれば決断が保留になる、ミスは許されない、と焦った永瀬は、自ら「願わず語らずの碑」を破壊しようとします。スコップでほこらを叩くとかけらが当たりイラつく永瀬。思わず石碑を蹴飛ばして壊したその瞬間、不思議な風が吹きました。
それ以来、永瀬の様子がおかしくなります。
いつもの上手い嘘やお世辞ではなく、偽りなき真実がペラペラと口から出てしまうように。仕事中だけでなく、プライベートでも嘘やごまかしができなくなり、人間関係がおかしなことに。「どうしちゃったんだ俺」と困惑する永瀬。これはあの石碑を壊した祟りなのか?
こうして「正直に」しゃべるようになった永瀬。彼が語る不動産業界の真実は、客からすると「知らないことすら知らなかった」常識ばかり。
たとえば「おとり物件」。不動産屋のサイトや店頭で良さそうな物件を見つけて、いざ来店すると「たった今、入居が決まってしまったんですよ」と言われたことはありませんか?
不動産屋側から見ると、掘り出し物件に見せかけた「おとり物件」を見た客から電話が来たら、アポを取ってとにかく来店させるのが目的。ですが、祟られている永瀬は正直に電話口で「たった今、入居が決まってしまったんです」と来店前に伝えてしまいます。
これを知った部長がやってきて、
「今回のお前の課長昇進はなくなった」と言います。
「必要がないことは客に教えない言わない」。嘘を嘘で塗り固めた不動産業界の舞台裏がのぞけてしまう本作は、客の側からすると恐ろしくも勉強になり、受け身のままではいけない、と身が引き締まる思いになれます。「千に三つしかない」真実を語る体質になった彼は、今後もNo.1営業マンの地位を守り抜けるのでしょうか?
冒頭では主人公は冷酷そうに見えますが、実は共感性が高く「一言多い」と言われる人情味ある性格なのがキモ。彼の言葉は正直すぎて毒舌な時もありますが、誰かを本質的に傷つけるものではありません。不動産業界の真実をズバッと語る彼に気づけば「共感」し、彼を応援したくなっているはず!
【漫画】『正直不動産』第1〜2話を試し読み!
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©大谷アキラ・夏原武‧水野光博 / 小学館「ビッグコミック」連載中
『正直不動産』
大谷 アキラ (漫画) 夏原 武 (原案) 水野 光博 (脚本)
口八丁で稼ぎまくるNo.1営業マンの永瀬財地は、ある地鎮祭の前にほこらと石碑を破壊したのをきっかけに嘘がつけない体質になってしまう。不動産業界の裏側を全て暴露する痛快お仕事ストーリー!
作者プロフィール
大谷アキラ
『正直不動産』(小学館)作画担当。過去作に『ツール!』、『ニッペン!』、『機動戦士ガンダムFAR EAST JAPAN』(原作・矢立肇、原作・富野由悠季)などがある。
Twitterアカウント:@fbux8afar6
夏原武
『正直不動産』(小学館)で原案担当。『クロサギ』『仁侠転生~異世界のヤクザ姫~』『逃亡弁護士成田誠』(小学館)『伝説の頭 翔』(講談社)『合同会社・正義屋』(白泉社)『カモのネギには毒がある―加茂教授の”人間”経済学講義―』(集英社)など漫画原作・原案多数。
Twitterアカウント:@t_natsuhara
水野光博
『正直不動産』(小学館)脚本担当。漫画原作担当作品に、『Deep3』。漫画脚本担当作品に、『ちいさいひと 青葉児童相談所物語』、『新・ちいさいひと 青葉児童相談所物語』(小学館)などがある。
©大谷アキラ・夏原武‧水野光博 / 小学館「ビッグコミック」連載中
構成/大槻由実子
編集/佐野倫子
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