「Kiss」で連載中の『やんごとなき一族』の舞台は、日本有数の高級住宅街で知られる芦屋を彷彿とさせる、とある町でひときわ目立つ邸宅・深山家です。豪邸に超高級車、百貨店を貸し切って値段も見ずに服や宝飾品を買うのは当たり前といった、人も羨む暮らしぶりです。その一方で、先祖代々の財産を受け継いで、それを次世代へと確実に継承するためにさまざまなしきたりがあります。理不尽なものも少なくなく、特に深山家の女性たちは苦労を強いられてきています。

『やんごとなき一族』は現実に。作者こやまゆかり先生に聞く上流社会の華やかで恐ろしい世界_img0

 

主人公の篠原佐都(さと)は、下町の商店街にある大衆食堂で生まれ育った「ザ・庶民」。店の常連だった健太と付き合うようになり、やがてプロポーズされます。いよいよ結婚のご挨拶、という段階で、健太が芦屋にある名家の御曹司であり、その深山家が庶民の感覚とはかけ離れた価値観を持っていることを知ります。親族の大反対を押し切り、駆け落ち同然に入籍をする二人。健太は、理不尽なしきたりや複雑な人間関係に嫌気が差して深山家から離れていましたが、佐都との結婚を機に、一緒に内側から深山家を変えていくことを心に決めます。

 


“やんごとなき世界”は取材をベースに。
あまりに凄すぎて描けないことも

 

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やんごとなき一族』(1) こやま ゆかり (著)

異次元転生ばりの環境に身を置くことになった佐都の奮闘ぶりを中心に物語が進んでいくのですが、庶民には到底うかがい知ることができない上流社会の人たちの暮らしぶりや、一筋縄ではいかなさそうな人付き合いなどを垣間見ることができるのも、作品の魅力のひとつ。中には「こんなこと本当にあるの?」と思いたくなるエピソードもあるのですが、作者のこやまゆかり先生によると、「実は本当にあるんです」とのこと!

「読者の方からも、そういう感想をいただきます。もちろんエピソードの形は変えているし、エンターテインメントとして派手な演出にしていますが、ほとんど取材でお聞きした実話を土台にしています。あまりに凄すぎて『これは書けない……』と思うものすらあるんです。でも、本当に面白いエピソードがいっぱいなので、なんとかして展開に取り入れたいと思っています」(こやまゆかり先生、以下同)

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子育てに追われ、身だしなみもおろそかにしていた主婦が夫の浮気をきっかけにモデルの世界に飛び込む『バラ色の聖戦』や、大人のリアルな四角関係を描いた『1/2の林檎』など、等身大の女性たちの心情が生き生きと描かれた名作を数多く世に送り出してきたこやま先生。次回作の構想を考えている時に、“上流の世界を描く”というテーマは決まっていたものの、ただのセレブや大金持ちではなく、歴史や格式、しきたりのある上流社会を描きたいと考えていました。そんな時、知り合いの紹介で、芦屋の歴史的名家のお花見会に参加する機会に恵まれました。

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「一般の人には知り得ない上流社会を描きたいと思っていたので、本当に運命の出会い。芦屋や神戸をはじめ、関西の名だたる方々とつながり、それが『やんごとなき一族』の土台になりました。ビックリするようなお話を聞かせていただき、ご協力をいただいています」


悪役にもそうせざるを得ない事情がある


「やんごとなき一族」では、上昇志向の強い長男の妻・美保子や、かつて健太が憧れていた女性で、佐都から健太を奪い取ろうとする立花泉など、手強いライバルが次々と登場します。読んでいる時は佐都目線で「腹立つ〜!」と思ってしまうのですが、彼女たちもまた、上流社会や深山家の中で葛藤を抱えていたり、心に傷を負っていたりします。

「悪役を描く時にいつも意識しているのは、ただ一方向から見ただけの浅い描き方はしたくないなぁ、ということ。たとえ悪役でもその人にとっては正しいことで、そうせざるを得ない事情があったりするからです。ムカつく人間だけど、どこか納得できる部分もあると思ってもらえるとうれしいです」
 

佐都役は土屋太鳳さんだったらいいなと思ってた


佐都や過去の作品の主人公たちのように、こやま先生の描く女性たちは、苦しい立場にあってもなんとかもがいて現状を打破しようとする強さがあります。だからこそ、こやま先生の作品は長年、多くの女性の支持を得続けています。

「世の中が男女平等になってきたとはいえ、まだまだ女性が理不尽な思いをする場面がたくさんあります。そんな中で頑張っている女性たちを少しでも応援したく、また、次の世代のためにも今の時代の私たちが変えていかなきゃ、という思いをマンガという媒体を通して伝えられたらと思っています」

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いよいよ4月からスタートするドラマ『やんごとなき一族』ですが、佐都役は土屋太鳳さんだったらいいな、と以前から思っていたというこやま先生。

「土屋さんのお名前を聞いた時は本当にうれしくてビックリしました。松下洸平さんも健太そのものという感じでピッタリですし、深山家一族のみなさんもとてつもない迫力でビビってしまいました(笑)。華やかで恐ろしい、知られざる日本の上流階級の世界を映像で見られるなんて、こんな楽しみなことはありません。現実の世の中は大変なことだらけですので、ぜひドラマを見て元気になったり、ゴージャスな気分になったりしてもらいたいです」

「Kiss」本誌の連載では佐都と健太の間に子どもが誕生し、さらなる展開が繰り広げられています。

「まだまだ描いていない面白いエピソードや伝えたい世界があるので、それらをどんどん展開に取り入れていきます。それぞれのキャラクターの成長や着地点を、どうぞ最後まで楽しみに見守ってください!」

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『やんごとなき一族』
こやまゆかり 講談社

佐都は恋人の健太からプロポーズされる。健太は芦屋の富豪・深山家の次男なのだが、庶民的な健太に親近感を持っていた。しかし健太に連れられていった深見家は佐都の想像を絶する大邸宅だった。厳格な父・圭一により佐都は門前払いにあう。二人は駆け落ち同然で入籍、圭一はある策略を思いつき二人の結婚を認める。一族の真実の姿とは──?

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