皆さんは、テレビやネットで流れているニュース、SNS上でのコメント、世間のうわさなどを見聞きして、「漠然とした不安」に襲われたことはありますか? その類の不安は、「友人を怒らせたかもしれない」「給料日まで小遣いが続かないかも」といった身近で具体的な不安に比べてインパクトは弱いですが、心にねっとりまとわりついて、気づけば低温やけどのようにいつまでも傷跡が残っていたりしますよね。

でも冷静になればわかりますが、自分には直接関係のない情報、もしくは実際に目撃したわけではない情報……それこそ嘘かもしれない情報に対して右往左往するのは本当におかしなこと。とても不毛な行為ですよね。

そんな状況に陥らないための心構えや思考パターンを教えてくれるのが、ジャーナリスト・池上彰さんが上梓した『社会に出るあなたに伝えたい なぜ、いま思考力が必要なのか?』です。

池上さんならではのわかりやすい言葉で説明された本書は、社会に出る前の青少年に向けて書かれていますが、長~い社会人生活を送っている筆者が読んでも目からウロコが落ちた感覚があり、自分の心が一つ上のステージに進んだ気持ちになりました。

皆さんにもその感覚を味わっていただきたいので、今回は本書の一部をご紹介したいと思います。

 


何が事実かを見極めるのが難しい時代


本書の冒頭、池上さんはさまざまな情報が飛びかう現代社会を生き抜くために必要なことを説いています。

「ネットの発達によってデマや陰謀論が『見える化』し、大量に流れ込んでくるようになった現在、何が事実かを見極めるのが難しい時代となりました。嘘のような陰謀論が、本当に陰謀だったという場合も、たまにあります。陰謀論を批判する側も頭ごなしに否定するのではなく、本当に陰謀なのか陰謀じゃないのか、しっかりと考えて見極めなければなりません」

 

では、絶え間なく流れ込んでくる玉石混交の情報に対してどのように向き合えばいいのでしょう? その突破口は、私たち一人ひとりの意識にあるようです。

「むやみに信じたり、頭ごなしに否定したりするのではなく、事実を調べて積み重ねながら、自分の頭で考えて判断するしかないのです。そうした思考力の重要性は、いまこそ高まっています」