想像していた以上に大変なアニメ制作現場の裏側


映画『ハケンアニメ!』の見どころのひとつは、間違いなく普段触れることができないアニメ制作現場の裏側を、隅々まで余すところなく見られるというのがあります。多くのプロフェッショナルの方々が矜持を持ってそれぞれの仕事を完遂していく姿は神々しくもあり、また、想像をはるかに超える厳しい現実には、思わず胸が痛くなるシーンも。今回の撮影でおふたりが感じた“アニメ制作現場”について伺いました。

【吉岡里帆×中村倫也】新人扱いから「認めてもらえた」と感じた瞬間は?_img3

 

吉岡:以前からアニメを作るのは本当に大変なことだとは知っていましたが、想像していた以上にもっと大変というのが撮影していて分かりました。そして、もうなんというか“ありがたみ”が増しましたね。裏側を知れば知るほど、普段テレビでアニメを見させてもらえるのはなんて贅沢なんだろうって思います。私たちもドラマなどを撮影するとき、一瞬のシーンを一日かけて撮っていたりするので、そこはすごくリンクするところがあるんです。完全に同じではないけれど、同じような痛みが存在するなって思います。

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©️2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

中村:(吉岡さんと)同じように、ひとつひとつの作業の細かさやセクションやそこに関わっている人の多さなど、そういったことを詳しくは知らなかったんです。実際に人を動かしていくためにめちゃくちゃな枚数を描くわけですし、それから色を付けて、レイヤー化していき……と、もう、これを自分が実際にやるとなったら気が狂ってしまうかもと思ったんです。でも同時に、劇中で「世界を生み出す」というようなセリフがありましたけど、やっぱり夢があるなぁと改めて思いましたね。

自分の仕事との比較になってしまうのですが、【世界観】というものをきちんと構築して作り出せればアニメーションは本当に間口が広い。実写だとなかなか表現できないことや、CGにしてしまうと予算がかかり過ぎて不可能なこともあるじゃないですか。実写とCGを合わせることで説得力が失われてしまう場合もありますし。

でもアニメの世界なら、ロボットを操ることもバイクで原色の世界を駆けまわることもできるわけで、やはりいろんな世界観の受け皿になれるのはすごいですね。限りなく広いジャンルのことができるわけですから。

 

ステージが変わったのを実感したのは
「中村りんやさん」と呼ばれなくなったとき


映画の中では吉岡さん演じる斎藤監督が新人からプロフェッショナルへと実力をつけていくさまが見事に描かれます。もちろん、誰もが最初は新人であり、経験を積み上げること進化していくわけですが、おふたりが俳優というお仕事を重ねられてきて、【新人扱いから少し認めてもらえた】と思えた瞬間のことを覚えていらっしゃるでしょうか。

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©️2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

吉岡:座長をやった時ですね。その時は状況がガラッと変わったなと感じました。周囲の方が「どう思っていますか?」「どうやりたいですか?」と私の意見を聞こうとしてくださって。これが、次のステージなのかな、と思いました。

「でもやはり怖さがあったんです」と吉岡さんは続けてくれました。

吉岡:今までは言われたことをそのまま体現できたら良かったし、周りの先輩たちが守ってくれていたけど、「もう、そうじゃないんだ」という自覚がすごくあって。自分が作品を盛り上げなくちゃいけないし、もっともっと考えなきゃいけないと思いましたね。

中村さんはいかがでしょうか?

中村:新人扱いから……ですか……。ずっと同じ環境で仕事をしているわけではないのでバラバラなんですけど、そうだなぁ、衣装合わせで名前を呼ばれるときにほぼ「中村りんやさん」って呼ばれていたんで、それがなくなったときですかね(笑)。

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中村:いまから10年くらい前。26、7歳くらいですかね。僕たちの仕事は現場によってスタッフの方々も毎回変わるので、スタッフの方々の個性や考え方をすべて理解しきれているわけではないと思うんです。でも、率先して理解しようとコミュニケーションを取ろう、場が円滑に進むように立ち回ろう、とそういうことをするようになったのもやはり26、7歳くらいだった気がします。