年齢に応じてできることが変わっていくほうがいい
今回は“役者”として“監督”という役柄を経験されたおふたり。役者という仕事から考えると、自分自身をプロデュースすること、イコール“監督”という立ち位置でもあるのではないかということで、ご自身が設定されているゴールや目指しているものについても伺ってみました。
吉岡:少し年齢を重ねてきて、求められるイメージに応えるだけでなく、もう少しパーソナルな部分が見えてもいいのかなと思うようになったかもしれません。もちろん、お仕事は私個人のものではなく作り手さんのものなので“応えていくスタイル”は必要だと思っています。ただ、年齢に応じてできることが変わっていくほうがいいなって。ちゃんと年を重ねられる人になりたいと思います。
中村:里帆ちゃんの今の話の後で申し訳ないんですけど(笑)、僕はデビューした頃から飽き性なので、いろんな役をいろんな作品、いろんな媒体、映画なのかドラマなのか舞台なのかトークライブなのか分からないですけど、とにかくいろいろやっていきたいなって思っています。そして、本当にありがたいことに、今までずっとそういうふうにやらせてもらっているので、なんというか、一生現状維持ができればいいかなって思うんです。今、すごく幸せなので。あとは自分の体力も落ちていくだろうから、それをちゃんと無理をしない範囲で、ある程度の休む時間を取りながら年を重ねられたらいいかなと思っていますね。
自分のハードルを越えるには“いい妥協の仕方”を覚えることも必要
最後に、この映画のテーマでもある<ハケン=覇権>についてお聞きしました。おふたりにとって、覇権を取る、テッペンを取ることは何でしょうか?
吉岡:覇権ですか……。私的な”テッペン”でいうなら、おばあちゃんになっても仕事を続けていることかなって思います。いま29歳なのですが、年を重ねて自分がどんどん大人になって年老いていっても、そこで私を求めてくださる方がいたら本当にすごいことだと思うので、それが目標ですかね。
中村:僕にとっての覇権ですか……。何だろう。テッペン獲るみたいな目標はないですしね。今回の映画で言うなら、裏番組での闘いなので視聴率とか評価とかがあると思うんですけど、僕らは個人でそれぞれがそれぞれの山を登る作業なので、あんまりそういう感覚は持ってないです。
そう答えてくださった中村さんに、もうひとつ、映画に即したテーマとして「妥協しないで好きなものを貫く」ことについて聞いてみました。ご自身の中で、絶対に譲れないもの、妥協したくないものはあるのでしょうか。
中村:もうオトナですからね(笑)。この映画からは少し離れちゃうかもしれませんが、“いい妥協の仕方”を覚えることも必要かなとは思います。自分に対して自分だけが設ける、誰にも迷惑もかけないし気付かれもしない、自分で自分に設けるハードルみたいなものはあって、そこに対してはすごくストイックな面もあるんです。でも結局僕の仕事は自分ひとりでやるわけではなく、人と反応を起こしていく仕事なので、自分の執着だけにアンテナを張っていても仕方がないのかなって。もっともっと柔軟でいなきゃいけない――、そういうふうに思っています。
吉岡里帆 Riho Yoshioka
1993年1月15日生まれ、京都府出身。連続テレビ小説『あさが来た』(NHK)で注目を集め、2021年には『レンアイ漫画家』(フジテレビ)、『華麗なる一族』(WOWOW)に出演。近年の主な出演映画は『パラレルワールド・ラブストーリー』『見えない目撃者』(19年)『泣く子はいねぇが』(20年)、声の出演をした『漁港の肉子ちゃん』(21年)など。公開待機作に『ホリック xxxHOLiC』『島守の塔』、主演ドラマ『しずかちゃんとパパ』(NHK BS)などがある。
中村倫也 Tomoya Nakamura
1986年12月24日生まれ、東京都出身。2021年はドラマ『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京)に主演、劇団☆新感線『狐清明九尾狩』では主演の安倍晴明を演じた。吉野耕平監督とは『水曜日が消えた』(20年)に続くタッグとなる。近年に映画『人数の町』(20年)『騙し絵の牙』(21年)『ウェディング・ハイ』(22年)など。現在、「中村倫也のやんごとなき雑炊」を連載中。今後は「仮面ライダーBLACKSUN」(秋配信)、ミュージカル『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』(10月~11月 東京芸術劇場プレイハウス他)などが控えている。
<映画紹介>
『ハケンアニメ!』
5月20日(金)全国ロードショー
地方公務員からアニメ業界に飛び込んだ斎藤瞳(吉岡里帆)は、監督デビュー作で、憧れのスター監督・王子千晴(中村倫也)と覇権を争うことに!
過去にメガヒット作品を生み出し、天才として名を馳せる王子は、プロデューサー・有科香屋子(尾野真千子)とタッグを組み8年ぶりに監督復帰を果たすのだ。
瞳は、クセ者プロデューサー・行城理(柄本佑)や、個性的な仲間たちと共に、汗と涙と鼻水にまみれ、アニメの頂点【ハケン(覇権)アニメ】の称号を手にするべく、熾烈な“闘い”に身を投じていくが――。
出演:吉岡里帆/中村倫也
工藤阿須加/小野花梨/高野麻里佳
六角精児/柄本佑/尾野真千子
原作:辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス刊)
監督:吉野耕平
脚本:政池洋佑
音楽:池頼広
主題歌:ジェニーハイ “エクレール”(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN)
配給:東映
©️2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会
2022年5月20日(金)全国ロードショー
https://haken-anime.jp/
撮影/Junko Yokoyama ( Lorimer management+ )
ヘア&メイク/北原果(吉岡さん)、Emiy(中村さん)
スタイリング/圓子槙生(吉岡さん)、小林新(中村さん)
取材・文/前田美保
構成/川端里恵(編集部)
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