初産の平均年齢は31歳なのに...
日本とフランスの初産の平均年齢に違いがあるのか調べたとき、約31歳でほぼ同じだった。時代が下るに連れ徐々に平均年齢が上がっているのも同じ。いつか「高齢出産」が大半を占めることになれば、日本でもさすがに呼び方を変えるのかもしれない。
「それで蘭は糖尿病、大丈夫だったの?」
「うん、夜には結果が届いて問題なしだった。でも貧血気味ってわかって助産婦から鉄剤を処方されたんだけどーー」
飲み始めた翌日から、落ち着いていたお腹の様子が急転直下。うんうん唸りながらトイレで暮らすはめになった。
「で、別の種類の鉄剤も出してもらって交互に飲むよう言われてるんだけど、それに合わせて下痢と便秘が交互にくるっていう……ここにきて体重減り気味」
「辛いね……食事でカバーできるといいんだけど。ほうれん草とレバーだ!」
「それが『鉄分にはほうれん草』は迷信だから、レンズ豆を食べなさいって。あと妊婦のレバーはNGって言われてる」
フランスでは「鉄分にはレンズ豆」が常識らしいが、私には馴染みが薄い食材だ。煮込みにサラダ、カレーやコロッケとレシピのバリエーションを広げようと苦心している。
「私は逆で、体重増えすぎって注意されちゃった。糖尿のことも、毎食山盛り食べてたご飯の糖が盲点だったみたい。甘いものは気をつけてたけど、和食はかなり砂糖使うしね」
「確かに煮物とか、日本の味は甘じょっぱい! こっちは塩分取りすぎのほうが注意かな。パンに既に塩入ってるし」
お互いの状況を足して二で割れればいいのに、としみじみ語り合っていると、久実子がふと目を細めた。
「だけどちょっと安心したよ。フランスはお医者さんの事前予約が必須で、お腹に不安があっても気軽に診てもらえないって聞いて心配してたんだ。でもちゃんと対応してもらえてるんだね」
「そうだね、本当に緊急の場合、総合病院の救急外来に行けば診てもらえるらしいし」
円華さんが「子供が熱を出して小児科の救急に連れて行ったら、七時間待たされた」とぼやいていたのを思い出したが、夜間や祝日でも「SOS Médecins(メドゥサン)」に電話すれば往診を頼めたり、受け皿は用意されているのは確かだ。
「出産まであと三ヵ月、気を引き締めていこう!」
ふっくらと薔薇色の頬をした久実子と改めて誓い合って通話を切ると、気合を入れて昼ごはんの餃子に取りかかった。スーパーで買える挽肉は牛だけなので、牛100%餃子だ。
包んだ餃子を皿いっぱいに並べていると、おなじみの差し込むような腹痛がやってくる。
Comment