こんにちは、ブランディングディレクターの行方ひさこです。ものぐさなわたくしの日々、そして身の周りにある「もの」との付き合い方についてゆるゆると綴って参ります。
2回目となる今回は、毎日何気なく使っている食器の機能美について。
1つ目は、イタリアの磁器ブランド、リチャードジノリ(現GINORI 1735)。
学生時代にバイトしていたカフェで使っていたカップが、リチャードジノリでした。当時、今思えばメイドのようなミニスカートの制服を着て、2杯分のコーヒーやハーブティーが入ったシルバーのポットと共に、シルバーのトレイに乗せてお客様にお出ししていました。
東京日仏学院(現アンスティチュ・フランセ)に通い、フランス映画ばかり見ていたフランスかぶれだった10代後半の私には、このシルバー×白磁の組み合わせが、なんとも言えずヨーロッパテイストに感じられて、とっても好きだったんですよね。
この肉厚でコロンとしたシルエットもたまらない! バイトを辞める時に店長が内緒でくれたこのティーカップは、もちろん今でも使っています。少し小さめな持ち手はちょっと持ちづらいけれど、本当に丈夫で、バイト先でも割れたところを見たことないです。
1735年に誕生したリチャードジノリは、ヨーロッパでは3番目、イタリアでは初の硬質磁器メーカー。
可愛らしいフルーツたちが散りばめられた「イタリアン・フルーツ」シリーズや、真っ白でエレガントな「ベッキオシリーズ」が有名なラインですが、ホテルや飲食店用に作られたラインもあるのです。もちろん、私が持っているこちらも業務用のもの。
お値段も1つ2500円程度と、とってもリーズナブル。これなら気負いなく日常使いできます。食洗機にも強く、欠けたり割れたりしずらいので、私のように長年の伴侶となる可能性も高いですよ。
一度倒産の危機に陥った時に、歴史あるブランドがイタリア人以外の手に渡るのを酷く残念に思いリチャードジノリを救います。その企業とは、同じく長年フィレンツェで伝統と技を守ってきたGUCCI! イタリア中で愛されていたのが感じられる、とってもいい話しだなーと。現在もGUCCI傘下で、美しさと親しみやすさが共存した磁器の数々を生み出しています。
もう1つご紹介したいのは、日本の磁器メーカーのNIKKOです。
1908年、石川県金沢市に「日本硬質陶器株式会社」として誕生した洋食器メーカーのNIKKOは、外貨獲得の国策によって各国へ輸出し、精力的に製造販売をしていました。戦争が終わり、1964年頃から高度成長と共に日本の食生活が大きく変化した時代、欧米化していったことで、日本の各家庭へも洋食器が普及していきます。
NIKKOのサイトを見ると「あ、これ実家にあった!」「おばあちゃんのお家で使ってた!」なんて懐かしいものがザクザク見つかります。
1978年にニッコーファインボーンチャイナが誕生しました。それまでは、18世紀にイギリスで誕生したボーンチャイナのアイボリー色をお手本に作られていましたが、より純白を目指しボーンアッシュ(牛骨)の割合を50%にまで高めることで、より白く強い器が出来上がったのです。
というか、お皿に牛の骨が入っていたなんて、つい1ヵ月前まで知りませんでしたよ。
ボーンチャイナってそもそも、Born(生まれる)China(中国)ではなく、Bone(骨)China(中国)なんですね。Chinaは、中国という固有名詞の他に「磁器」という意味も持つそうです。15世紀には漆がヨーロッパでは「Japan」と呼ばれていたのと似たようなことなのでしょう。
このニッコーファインボーンチャイナができたことで、ホテルや飲食店に向けて大量に強くて美しい良品が作られています。
去年、2021年には今までの大量のアーカイブの中から選ばれたアイテムたちを今の気分に再編集した新しいライン「REMASTERED(リマスタード)」が誕生。アートディレクターの平林奈緒美さんを迎えた新しい試みです。
たくさんのホテルや結婚式場などの飲食店で扱われているニッコーの器たち。こちらもリチャードジノリ同様に、繰り返される食洗機にも耐えられるタフさとリーズナブルな価格帯も魅力的。
私のおすすめは、特にオーバルの器です。丸いお皿の中にオーバル型を1つ加えるだけで、テーブルにちょっとした変化が出ます。パスタやカレー、サラダ、ワンプレートランチに……大きなオーバル皿の上に小さい丸いお皿を乗せてもいいですよね。
土ものやカラフルな器が流行っても、結局のところ和洋中デザートなんでも受け止めてくれる白に戻る気がします。長い時間、全てのものに合うように作られている器には、時間と共にさまざまなバランスを整えて研ぎ澄まされた何かがある。そこには全てのチャレンジを受け止めてくれる、そんな懐の大きさがあるように感じます。
最後までお読みくださいまして、どうもありがとうございました。
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