80名のウクライナ人女性たちがフランス・カンヌに集結しました。「求めているのは慈悲や同情、お悔やみの言葉ではありません。ウクライナが今、必要なのは新しいビジネスプロジェクトです」と、声を上げる彼女たち。4月に開催された番組コンテンツ国際取引マーケット「MIPTV」で経済活動を模索する姿を現地で取材しました。

 

避難先のポーランドから参加したウクライナ人女性


カンヌ入りした2日目の夜のことでした。コート・ダ・ジュール海外沿いのレストラン貸切ネットワーキング会でいつものようにMIPTVマーケット参加者と挨拶していた時です。

「今は大変な時にあることは確か。でも、私の国のウクライナのために自分が今できることを考えて、カンヌに来ました」。

そう、目の前にいる彼女はウクライナ人女性でした。連日にわたってロシア軍によるウクライナ侵攻が報じられていますが、現実に起こっているということをこれほど実感したのはこの時が初めてでした。

 

同時に気付いたのが、周りにいたドイツやポーランド在住の知人にとってこれは身近なことであること。お悔やみの言葉を返すだけでなく、彼女が実際に体験している状況を親身にかつ冷静に聞いていたからです。今はポーランドに避難していること、ウクライナに残っている家族もいること。そう話す彼女自身も常に毅然とした表情でした。

そして、彼女がおもむろに鞄から取り出したのはノートの切れ端で作った手作りの名刺でした。「アラって呼んでくださいね。ポーランドに避難する時にいつも使う名刺をウクライナに置いてきてしまって。今はこれで」と、微笑みながらそれを渡してくれました。

 

この名刺はどんな状況下でも仕事を続けようとするアラさんの強い意思の表れを示すもの。この瞬間まで同情の気持ちの方が上回っていたことが恥ずかしく思えたほどです。実際にこの後続いたアラさんとの会話からさらに実感できました。ウクライナのとあるメディア企業の顧問弁護士として活動するなか、ウクライナのコンテンツ流通促進のために「今は何でも取り組みたい」という言葉は真剣そのものでした。