指導する桐沢の成長を描く、不良のいない学園ドラマ


『未来への10カウント』では、生きる希望を喪失した桐沢が、ボクシング部との関わりを通じて、熱い気持ちを取り戻していく姿が描かれます。前述の学園ドラマたちが、教師が生徒の心を変えるものだとしたら、本作は真逆の仕組みになっている。桐沢がコーチを務めるボクシング部の部員たちは、最初からやる気があるんですよね。それぞれに抱えている問題はありますが、『ごくせん』のような不良は出てこないし、『ROOKIES』に登場する野球部員のように、まずは授業に出るところから……というわけでもない。生徒の成長物語というよりは、指導する側である桐沢が成長する姿にスポットを当てている。王道の学園ドラマとはちがう点が、面白いなと思いました。

 

ちなみに、ボクシングのオリンピック強化選手だった桐沢は、網膜剥離をして選手生命が絶たれた過去を持ちます。生きる希望をなくした時に、新たな希望になってくれた妻・史織(波瑠)は、結婚してたった1年半で死去。やっと、立ち直ってきた時に開業した焼き鳥店は、コロナの影響で潰れてしまいます。第3話でこの過去が明かされた時、あまりの残酷さに胸が締め付けられました。しかし、それでも人は生きていかなければならない。本作は、生きる希望をなくしたあとの生き方を提示してくれる作品になるのではないでしょうか。

『未来への10カウント』は、桐沢だけでなく、生徒たちにも容赦なく現実を突きつけていきます。第4話、「試合に勝って、リングの上で告白をする!」と宣言した伊庭(高橋海人 ※高ははしごだか)は、あえなく敗戦。せめて、告白だけは成功させてあげたい……と誰もが願ったはず。しかし、「無理!」とキッパリ振られてしまいます。ただ、本作が描きたいのは“その後”の姿。伊庭は、吹っ切れた様子で「受験に専念できる」と前を向きました。どんなにつらいことがあっても、また次の“希望”を見つけて歩んでいく。10代の高校生たちの前向きさが、桐沢の心を動かしていくことになりそうです。最終話では、満面の笑みを浮かべる桐沢の姿が見られることを願って。
 

 


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