こんばんは。編集・川端です。
「真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室」、第108夜をお届けします。

 


今夜のお便りをご紹介します。ペンネーム・韓国のりさんからいただきました。

「私はこれまでフィクションの小説ばかり読んでいました。でも、昨年ノンフィクション大賞を受賞された上間陽子さんの『海をあげる』を読み、上間さんと同じ沖縄に住んでいながら、沖縄の若い女性がおかれている辛くて苦しい世界を知らなかったことにショックを受けました。立て続けに『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』を読んでさらに頭をガツンとやられ、もっともっと現実に目を向け、知らなければいけないことがたくさんあるんじゃないかと思いました。フィクションも変わらず好きで読んでいますが、ノンフィクションやルポを読んでみたい欲が湧いています。バタやんさんのおすすめがありましたら教えてください」

とのリクエストにお応えしたいと思います。

今夜の勝手に貸出カードは早見和真さんの『八月の母』にしました。
こちらリクエストいただいたノンフィクションではなく、小説なんです。2014年に愛媛県伊予市の市営団地で起きた「少女暴行殺人事件」という痛ましい実際の事件をベースにしながら、著者早見さんの視点で事件の背景を掘り下げ、フィクションとして描いた本です。ある事件や事故について「なぜ?」「その人はどんなことを思っていたのか?」を描くとき、ノンフィクションよりもフィクションのほうがときに真理を突いているのかもと思わせられた小説です。

小説『八月の母』では、美智子、エリカ、陽向と3代にわたる母娘が描かれます。最終的に集団暴行致死事件となってしまう悲惨な事態は、なぜ引き起こされたのか? 殺されてしまった少女はどうして途中で逃げ出さなかったのか? 「毒母からの呪縛」などという言葉では片付けられない、どう足掻いても逃げ出せなかった蟻地獄が描かれます。

『八月の母』を読み終えた後、私はこの愛媛の事件のことをネットでいろいろ検索して読んでしまいました。17歳の少女が市営団地の一室で母親を含む少年少女に集団で長時間にわたって暴行を受けて亡くなったという知れば知るほど胸の痛む凄惨な事件です。知ってから小説を読むのがいいか、読んでから知るのがいいかはお任せしますが、いずれにせよ、数日間はズーンと気持ちが引きずられて、体力が奪われるくらいの重たさです。心してどうぞ!


<今夜の勝手に貸出カード>

『八月の母』早見和真


【第108夜】母娘の呪縛ものに隠れた圧倒的な父親の不在感


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リクエスト、ご質問も引き続き募集しております。番組内で採用された方には、バタやんがセレクトした本を1冊プレゼントいたします。

<次回>
5月25日(水)22時配信予定

下記よりご感想、メッセージをお待ちしております。


撮影/塚田亮平

 

 


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