虐待を受けた子供に用いる特殊な面接技法


廣川さんは、虐待を受けた保護児童に対して事実確認をするときに用いる「フォレンジック・インタビュー(Forensic Interview)」を紹介しています。アメリカで取り入れられているこの面接技法は原則的に一度だけ行われるもので、心が傷ついた子供に二次的なトラウマを与えない効果、そして子供の記憶の変化を防ぐ効果があるといわれています。

廣川さんはフォレンジック・インタビュアーのジェニファーが行った、インタビューのシミュレーションの様子を克明にレポートしています。保護児童を演じるのは若手インタビュアーのサラ。彼女は父親に性的虐待を受けた8歳の女の子という設定でインタビューに臨みました。

 


「その場所は、明確には、どこの部分?」事実を導き出す容赦なき質問


「サラ、なぜ、あなたがここに来たか教えて」というジェニファーの質問から始まったこのインタビューは、佳境に入るとかなり踏み込んだ内容になっていきました。

 

「パパが触ったときの様子を、すべて教えて」
「パパは、最初に撫でたの。ペットを撫でるように。それから、その部分を広げたの。そしたら、突然、そこが痛くなった」
「それから、どうなったの?」
「パパは、そこに指を入れて、なんかヘンなことを言ったわ。私は泣いたの。でもパパは、大丈夫だからって言うの」
「指が入ってきたのね。その指のことを教えて」。ジェニファーは明確な発音で言った。
「撫でたり、中に入れたり、動かしたりしていた」
「そのとき、どう感じたの?」
「痛いし……気持ち悪かった……」
「OK……その場所は、明確には、どこの部分?」
「下の部分。女の子のところ」
「それを何て呼ぶの?」
「それは、あなたが知っているでしょう?」。サラは口を尖らせ、少し怒った口調で、言いたくない態度をとった。
ジェニファーは優しく言う。
「男の子と女の子とでは、付いているものが違うでしょう? それを何て呼ぶか、知っていたら教えて」
サラは、腰の位置をずるりと前に出し、浅く腰かけて、膝を抱えると、顔を歪ませて小さな声で言った。
「……膣」
ジェニファーは、静かにうなずいた。