こんにちは、ブランディングディレクターの行方ひさこです。

ものぐさなわたしの日々、そして身の周りにある「もの」や「もの」との付き合い方などをゆるゆると綴って参ります。

今回はライフワークでもある、ものづくりの現場を訪れることについて、そして3月から始まった連載について。

先月取材で訪れた陶芸家・山田隆太郎さん。2度目ということもあってか、お互いに全く忖度のない本音トークが出来ました。彼の作る力強くも繊細な作品が大好き。

東京のど真ん中に生まれ落ちたわたしは、若い時には大変な勘違いをしていました。

 


「東京は日本中のものが集まっているなんでもある場所、そして日本を牽引している街」

井の中の蛙だったわたしは、そう思い込んでいたのです。

お恥ずかしいことに高校生の時は特に勘違い甚だしくて、自分たち東京の女子高生が日本の真ん中にいて、なんならトレンドを作っていると思っていたほどです(汗)。ふー。

遅ればせながら分別もついてきた頃、「東京って、誰かの視点で(または利権)でいろんな文化を集めてきたセレクトショップみたいなものだな」と、ふと思いました。「根っこを残して引き抜いてきたものが並んでいたんだ」と。

自分の世の中に対する無知さを痛感しまくった瞬間でした。

京都府南山城村で作陶している陶芸家 清水善行さんのところに研修へ。まずは草むしりから。東京からきたお嬢ちゃんに何ができるかな? と思われているのを跳ね返したくて、とにかく必死で8時間! 草の根からむしりました。

そこから、「自分の目で文化の根っこを見たい、体感したい」と強く思うようになり、無知な自分に少しでも栄養を与えるべく、興味があるものがあったらその現場に訪れて直接肌で感じる、ということがライフワークになりました。

清水善行さんのところで2日目はやすりがけ作業。指紋がなくなるかと思いましたが、器を作るだけではない作家さんの日常を知りたかったので、草むしりと共にとても良い時間に。本気度を見た目で表現するために繋ぎを着用!

そして、自分の手でものを作り出せる人って偉大だなぁと思うのです。

もうきっとプリミティブな生活には戻らないと思うけれど、あるものを当たり前だと思っていると、脳みそが動かなくなりそうな気がして。

以前お付き合いしていた彼に、「お土産でお箸を買ってきてー」と頼んだところ、「箸くらい、まずは自分で作ってみたら?」という返事が。

その時は驚いたけれど、言われてみたらそうだよね、と思ったわけなんです。

身のまわりのものをできるだけ自分の手で作ってみるということ、作れないにしてもどうやって作られているのかを想像すること。これも大切なことだなとここ数年は特に感じています。

ここ数年、発酵食品や調味料を手作りすることで、さらに食材や大量生産することで使われる食品添加物について考えるようになりましたし、ものづくりを見学したり体験させていただいたりすることで、ものの価値やストーリー、大切なことは何かについて考える時間が増えました。

徳島の阿波紙ファクトリーで和紙作り体験。「小学生用のノートを作っている会社と組んで、1枚和紙を入れることでもっと若い層に認知度を広められるんじゃないか」と心の中で勝手にプロモーション施策を考えながら作業をしてました。

ステイホーム中に10代から20代の4人に1人が、それまでしていなかったこと、絵を描いたり料理を始めたりといったことを始めたというデータがあるそうです。

何かを自分の手で作るということは、クリエイティブなことに時間を費やすようになりますし、さまざまなコミュニケーションを考えることになります。

金沢の老舗酒蔵 福光屋の見学へ。日本酒の樽は落ちたらすぐに命を落とすという危険と隣り合わせの仕事でもあります。

1から手で作らなくても、デジタルテクノロジーをうまく使うと、ものを作るという環境が整えやすくなりました。3Dプリンターを使ったりネットで調べたりしながら、自分で作ってみるという行為をすることで、より想像力が豊かになるんじゃないかと。

全てのものづくりの現場に実際に足を運び、自分の目で見て肌感覚で身につけるのは難しいけれど、できるだけ興味を持つことや理解するために考えることが人生の解像度をより高くしてくれる、そう思っています。

奈良県に植林見学に行った時のこと。日本にほとんど居なくなってしまったという樽職人さんのところで実際に木を削る体験をさせてもらっているところ。


というわけで、私は出不精でものぐさなくせに、ものづくりの現場を訪れるのが大好物なのです。

 
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