同性婚訴訟の結果は、私たちがつくる世の中の雰囲気で変えられる部分もある。
――今、日本の5都市で同性婚訴訟が起こされています。札幌では「同性婚を認めないことは違憲である」という判決が出ましたけど、Kanさんはこの訴訟のどういうところに注目していますか?
Kan たしかに札幌では違憲判決が出て、当事者に寄り添った考え方を示してくださったなと思っています。でも他の都市の裁判を見ていると、司法の場で「異性同士でなら結婚できるんだからいいじゃないか」というような言葉が出てきたり、同性のパートナーと結婚したいという気持ちを全く汲み取らないような心ない発言が出てきたり。それがけっこう少なくないので、当事者としてはなかなか見ていて苦しくなります。
――違憲判決が出たことだけが注目されていたけど、それを上回るぐらいの心ない発言もいっぱい出ているんですね。
Kan 原告の人たちは、今のパートナーとずっと結婚したいと思っているけどできずにいる。法的な保障がない中、必死で家族として生きてきたその苦しさとか悲しさを法廷で訴えているのに、その人たちに対して心ない発言ができる司法って何なんだろう、と考えてしまいました。でも変わるといいな、と思っています。
――そういう司法の発言も含めて、大阪地裁が6月20日にどういう判決を出すのか注目なんですね。ある意味、この国がどうなっていくのかという試金石にもなる。
Kan やっぱり国民の声って司法にも影響すると思うんですね。なので皆が選挙で自分の声を政治に反映させたり、婚姻の平等に貢献できるようなチャンスがあったらその都度行動したりしていると、その雰囲気がだんだんと社会をいい方向に変えていくと思うんですよね。
こういう同性婚訴訟のような報道があると、「議論が必要」というコメントがけっこう出てくるんですね。たしかにそうだと思うんですけど、当事者の僕からするといったいいつまで議論するんだろう、と思うんです。だってこれって、新しく誰かにとんでもない特権を与えるというような壮大な話ではなくて、これまで今ある制度から漏れてしまってきた人たちに平等な権利を付与する、という話じゃないですか。そこに何の議論が必要なんだろうって……。
僕の気持ちとしては、今、婚姻の平等が実現してもいいと思うんですよ。もちろん昨日でも良かったし、1年前でも良かった。もう議論は待てないな、というのが正直な気持ちです。
2019年2月14日、性別を問わず結婚ができるようになるよう「結婚の自由をすべての人に」訴訟が始まりました。この訴訟は、同性カップルが結婚できないことが憲法違反だと正面から問う、日本で初めての訴訟です。
札幌、東京、名古屋、大阪の裁判所で一斉に提訴された後、2019年9月には福岡の裁判所でも始まっています。また東京では2021年、2次訴訟も始まっています。
現在の状況は以下のとおり。
・札幌 2021年3月17日、「同性同士の婚姻を認めないのは法の下の平等を定める憲法14条に違反する」という判断が下された。しかし他の訴えについては「違憲に当たらない」とされたため、原告はこの判決を不服として棄却、控訴している。
・東京 5月30日に1次訴訟が結審し、11月30日に判決が言い渡される。また現在、2次訴訟もおこなわれている。
・名古屋訴訟中。
・大阪 2月21日に結審し、6月20日判決。
・福岡 訴訟中。
文/山本奈緒子
構成/坂口彩
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