「よくわからないから、何でもいい」と選挙に行かない人たちへ。候補者・政党の選び方_img0
 

いよいよ選挙が始まったので、私は飽きもせず「みんな、選挙に行こう!」という一人キャンペーンを始めています。今回はこの後3年も選挙がない、つまりここを逃せば「好き放題」な政治家たちに、「有権者ナメるのもええかげんにせえ!」と思い知らせる機会がしばらくありません。何しろ呆れ返るのはあのおニャン子クラブの……って話はさておき。でも「政治はよくわからないし、誰に入れたらいいのか……」という人も多いはず。そんなあなたに贈る今回のコラムは、晩御飯のメニュー選びのお話からいきたいと思います。

 

「何でもいい」は「何でもよくない」


家庭で料理担当の私がいつも面倒くさいなあと思うのは、料理を作る手間よりも、何を作るか考えることです。家族に聞くと返ってくるのは常に「何でもいい」だったりするわけですが、この「何でもいい」は本当の意味での「何でもいい」ではありません。鵜呑みにして適当に作ると、「もっとさっぱりしたのが良かった」とかうっすら文句言われて「んなら先にそう言えや!」って叫ぶハメになりますし、何より「何でもいい」と選択権を放棄した方は、我慢して食べるしかなくなります。こうした無益な「何でもいい」を平和的解決に導くマジックワード、それは「じゃあどんな気分?」です。中華な気分、麺な気分、胃もたれしそうな気分、ガツンと肉な気分、馬並みに野菜食べたい気分ーー具体的なメニューは出なくても、こういうのは意外と出てくるもので、ここに従えばドンずば! とは行かなくともまあ満足なものにたどり着くことができます。なぜならパッと思いついた気分はその人の正直な思いであり、その時の「優先順位の1位」だからです。

優先順位1位で選ぶ方法は、選挙でどの候補者を選ぶか、どの政党を選ぶかにそのまま使える方法です。私がものすごーく良くないなと思うのは、テレビの報道番組などが「今回の選挙の争点」とかを小難しく話すこと。今回でいえば「憲法改正」とか「物価高」とかで、もちろんこれもすごく大事ですが、争点は人に決められるものじゃなく、個々人それぞれ違うのが当然です。

例えば私の場合、確かに「物価高」は大きな問題ですが、それを是正するための「日銀の黒田総裁を!」とか「金融緩和が!」という経済政策よりも、「インボイス制度導入」のほうがずっと身近で深刻です。ホントに深刻なので一言付け加えますが、インボイスはいわゆる自由業だけの問題じゃなく、近所で安い価格で頑張ってる飲食店などの小さな商店や、農業自給率がヤバイと言われているこのご時世で農業従事者も直撃します。要するに廃業せざるを得ないってこと。

もちろん「消費税の引き下げ」を望む人や、ジェンダー平等を一番に考える人もいるだろうし、お子さんがいる親御さんなら、学費の無料化や性教育の実施、刑法における性的同意年齢の引き上げなど、若い世代なら夫婦別姓や最低賃金なども重要でしょう。自分が普段から最も身近に感じている不安や不満が、その人の「争点」です。政治のすべてを分からなくていいから、自分の「争点」だけ、ニュースなどをちょっとだけ読んでみるのはのはどうでしょう。例えば表向きは女性活躍とかいいながら、セクハラした議員を辞めさせず野放しのままにしているとか、夫婦別姓を認める気がないとか、そういうこともあるかもしれません。


公開質問状の回答から見える各党の本当のやる気


最近では市民有志が立ち上げた「みんなの未来を選ぶためのチェックリスト」というサイトがあり、各党に送って回答を得た公開質問状、20項目43問の答えを、わかりやすく「〇✕形式(無回答あり)」で一覧にしています。クリックすると、その詳細についてもの説明が短くあり、「〇」とは言ってるけど具体的に示さず「検討します」と言ってるだけ、実はやる気がないんだなというのも分かります。

そしてこうして並べて際立つのは、現在の政権与党・自民党は「どこが自由で、どこが民主なんだろう」ってこと。例えば自民党が「無回答」の項目、「夫婦別姓」について

「令和3年最高裁大法廷の判決(「選択的夫婦別姓は合憲」という内容)を踏まえつつ、氏を改めることによる不利益に関する国民の声や時代の変化を受け止め、その不利益をさらに解消し、国民一人一人の活躍を推進します」

「……を踏まえつつ」といいながら「やる」とは言わず、結局全然違う話に着地しています。要するに「✕」なのに、まわりくどい「いい人風」な言い方で焦点をぼやかしているのが見え見えです。ちなみに最大の争点と言われる「憲法改正」について、解説しているサイトがこちらの「自民党の改憲草案で憲法はどう変わる?」です。驚くのは、基本的人権の項目がバッサリ削除されていることです。全体として「昭和の常識をそのまま維持したいんだな」という印象を受けます。その時代にいい思いをしたおじちゃん、おじいちゃんたちが仕切ってる党だからでしょうが、その時代はもう30年~40年も昔です。

「昭和の常識」っていったら、東京選挙区で自民公認で立候補した「元おにゃん子クラブ」出身のあの人にも呆れました。「元アイドルが立候補したこと」ではなく、彼女がNHKの候補者アンケートの25項目中24項目で「無回答」だったことです。唯一「賛成」と回答したのは、自民党がなんとしても実現したい「憲法改正」のみ。オジサンに選ばれてその望みを具現化するアイドルとして生きてきた彼女は、今回もオジサンに選ばれて望まれるままの議員になるつもりなんでしょうか。でもアイドルと違って彼女に支払われる年間数千万の収入はすべて税金です。さらにあきれるのは選挙前から、メディアがこの人を「ほぼ当選」と予想していること。選挙に予断を与え、諦念を植え付けるようなこうした報道機関のあり方も含め、有権者は恐ろしいほどナメられたものです。
もう一度言いますが、今回はこの後3年も選挙がない、つまりここを逃せば「好き放題」な政治家たちに、「有権者ナメるのもええかげんにせえ!」と思い知らせる機会がしばらくありません。7月10日は、何をおいてもぜひ、選挙へ。


Photo by Manny Becerra on Unsplash

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