第75回カンヌ国際映画祭で、主演のソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞するなど、もはや「世界の是枝」ブランドを確立! そんな巨匠・是枝裕和監督の最新作、『ベイビー・ブローカー』に心つかまれたヘアライターさとゆみが、是枝作品に登場する女性たちの髪型だけを徹底チェックします!

 

みなさん、こんにちは。ヘアライターのさとゆみです。

カンヌ国際映画祭で2冠をとった是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』、話題ですよね。私も早速、観てきましたよ。超、よかったよ。
いろいろよかったけれど、なにせ役者さんが全員素晴らしかった。パンフ買って、全役者さんの過去作品リストアップしちゃったくらい、よかったです。

是枝監督といえば、今回の『ベイビー・ブローカー』だけではなく、『誰も知らない』や『万引き家族』で、捨てたり捨てられたり拾ったり拾われたりする子どもの物語が印象的だし、『そして父になる』の、病院で子どもを取り違えられた家族の物語も深かった。

そう、いろいろ語りたいの、やまやまなのですが、この連載はとことん内容には触れず、浅はかに髪型だけ解説してドロンするという主旨なので。はい、それぞれの映画で描かれた、母親たちの髪型だけ見ていきますよ。

 
『ベイビー・ブローカー』

【映画内容】
借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホさん)と、赤ちゃんポストがある施設で働くドンス(カン・ドンウォンさん)は、ソヨン(イ・ジウンさん)が預けた赤ん坊を売るために連れ去る。その様子を監視していた刑事スジン(ぺ・ドゥナさん)は、彼らを尾行する。

『ベイビー・ブローカー』で、子を捨てる母を演じるのは、イ・ジウンさん。韓国を代表するシンガーソングライター「IU」の名の方が知られているかもしれない。

これまでまあまあ無茶なことをしてきたであろう若い母のヘアスタイルは、金髪メッシュがアクセントになったロングヘア。イマドキな、でも決して裕福ではない感じのあるドライな質感。この、三つ編みをほどいて作ったようなウェーブは、パーマかな? クセ毛かな? パーマでは出しにくそうな波状ラインだなと思いながら見てました。
だるんとしたウェーブで、そのゆるっとパサっと感が、気だるい雰囲気につながっていたなーと感じます。

メッシュはかなり太め&明るめ。ゆるウェーブでも、これだけ太めのメッシュが入っていると、どこか芯の強さを感じます。時々はじけたように感情を表出させる役どころと、すごく合っていたと思う。

気になったのは、映画ラストの数年後のシーン。1回しか観てないから、見落としだったらごめんだけど、メッシュ消えていたような気がした。だとしたら、新しい出発の象徴かな、とも思いました。

対する刑事役のペ・ドゥナさんは、「子捨て」を憎むワーカホリックな刑事の役どころ。こざっぱりシンプルなショートヘアなのだけど、どこか影のある感じ、漂ってたなー。

イ・ジウンさんのルーズな茶髪と、あまり「構ってない感」あるペ・ドゥナさんの黒髪が対照的で、でもどこか疲労している感じが共通している。
「みんな、いろいろあるよね」って気持ちになるヘアなのでした。