「私にはまだ何ができるんだろう。自分への探究心が原動力に」(東山さん)
ーー映画でも、またここまでのお二人のお話でも「やりたいこと」というのが一つの重要なキーワードですね。では最後に、お二人が声優というお仕事を通してやりたいこととは何でしょうか。
花守 それはつねに考えていることではあるのですが、これまでを振り返ると、その時によって全然違っているなと思います。ちょっと前までは、「誰かの胸に残るようなお芝居をしたい」と、すごく強く思っていました。絶対に忘れられないようなものを残したい、というのを自分のテーマとして持っていたんですけど、最近はそうでもなくて。
作品を通して、自分の仕事に触れてくださる人がたくさんいること。年齢も性別も、なんなら国も関係なくいろんな人が自分の声を耳にしてくれることが、すごくありがたいなって感じるんです。だから、誰かの人生に強烈な何かを残すというよりは、大切な節目とかでなくてもいい、何気ない日にそっと華を添える彩りのひとつであれたら、それってとっても素敵なことなんじゃないかなって。そうやって誰かの人生にさりげなく、長く寄り添っていける役者さんになれたらいいなと、今は思っています。
東山 私はもともとアニメが大好きで、そこから声優を目指したので、「この素晴らしい心の体験をほかの誰かにも届けたい!」という気持ちでこの仕事を頑張っているところがあります。なのでこの『ゆるキャン△』をはじめとして、作品を受け取ってくださった方から嬉しい感想をいただけると、いろいろなものが巡りめぐっていると感じますね。アニメが生きがいだった私が、今は誰かの生きがいを作っている、その“誰かのために作る”ということが、今の自分の生きがいにもなっているなって。
この仕事をしてなかったら私はこんなに頑張れなかったなって思うことがたくさんあります。私は声優のほかに歌手業もやっていますが、アニメの仕事は“みんなで作るもの”という感覚が強いのに対して、歌の仕事もたくさんのスタッフさんと作ってるけど、誰よりもまず自分こそ頑張らなきゃ、自分が中心になってやらなきゃという場面も多かったりする。でもアニメも歌も表現のお仕事としてはどこかで全部繋がっていて、どちらも等しく大切で。
そう考えると今の私は、何をやりたいかというより「これを頑張ることで私はもっと新しい自分に出会える気がする」「私にはまだ何ができるんだろう?」というような、自分への探究心、好奇心が原動力になっているのかもしれません。だからこそ少しずつよりよい自分になれている気もするし、そうした実感のおかげで、毎日いろいろなことを頑張れている気がします。誰かのためにも頑張るし、自分自身のためにも頑張っていきたい、そう思っています。
花守ゆみり
神奈川県出身。おもな出演作に『トロピカル~ジュ!プリキュア』キュアコーラル/涼村さんご役、『かげきしょうじょ!!』奈良田愛役、『映像研には手を出すな!』百目鬼役、『ブルーピリオド』鮎川龍二役など。
東山奈央
東京都出身。主な出演作に「神のみぞ知るセカイ」中川かのん役、「きんいろモザイク」九条カレン役、「ニセコイ」桐崎千棘役、「マクロスΔ」レイナ・プラウラー役、「神クズ☆アイドル」最上アサヒ役など。
<作品紹介>
映画『ゆるキャン△』
原作コミックは発行部数700万部を突破、アウトドアブームを牽引した人気シリーズが待望の映画化。高校生だったなでしこたちも、今は社会人に。それぞれの道を歩んでいた5人はふとしたことで再会し、自分たちの地元にキャンプ場を作ることに! 大人になった今だからできる挑戦に、張り切るなでしこたちだったがーー。美しい自然と美味しいごはん、かけがえのない仲間と過ごすひととき。「明日もまた頑張ろう」、そんな気持ちになれるはず。大ヒット上映中。
撮影/塚田亮平
スタイリング/細田真弓 (花守さん)、下田 翼 (東山さん)
ヘアメイク/大庭由美恵 (花守さん)、田中裕子 (東山さん)
構成・文/山崎 恵
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