もう1つの理由は日本の企業文化です。日本では直接業務に携わるよりも、業務を管理する人の方がエラいという風潮が根強く残っています。もちろん最終的には管理する側に責任が生じますから、指示を出す上での序列というものは存在します。しかしながら、業務そのものは現場で行われていますから、付加価値はその業務で生じているという現実を忘れてはなりません。

明確に「現場」が存在する業界では、実務経験をほとんど持たない社員が、経験と知識が豊富な外部の社員とうまくコミュニケーションできず、業務に支障が出るケースが少なくありません。現場での仕事と管理の仕事は、仕事の中身と、与えられた権限に違いがあるだけで、本質的な上下関係はないはずです。上限関係という感覚を過度に持ち込み過ぎると、自身は知識も経験もないのに、エラそうに管理だけを行うという状態になってしまいます。

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イラスト:Shutterstock

こうした風潮は会社内部でも顕著であり、自身は直接、業務に携わっていないにもかかわらず、横やりを入れたり批判ばかりする社員が大勢います。当該業務に対して、十分な経験やスキルを持っていない人が、むやみに指示を出したりチェックすることばかりを繰り返していては、業務の質はなかなか向上しません。

 

実はこうした丸投げ文化というのは、日本の低賃金の原因の一つにもなっています。

ある企業が、本来であれば自社内で完結できる仕事を外部に再委託した場合、再委託された会社にも管理部門が存在しますから、管理コストが二重計上されることになります。再委託された企業が、さらに再委託した場合には、管理コストは三重計上です。管理コストが差し引かれる分、再委託、再々委託された企業の社員には、より低額な賃金しか支払われません。

日本の低賃金や労働環境の問題が指摘されている近年の状況を考えた場合、できるだけ再委託や再々委託は回避していく努力が必要でしょう。

特に公務の場合、国民の個人情報を扱うわけですから、外部への委託はより慎重であるべきです。

近年、役所の業務についても外注化が進んでおり、窓口の業務を丸ごと民間事業者に委託するケースも珍しくありません。一昔前であれば、窓口で対応するのは業務に精通した公務員でしたが、今では派遣会社の社員が一時的に派遣されて窓口対応していることもあります。

業務委託のすべてが悪いわけではありませんが、一時的に派遣された社員よりも、公務員の方が業務に精通しているのはもちろんのこと、責任の所在がハッキリしていることは明らかです。単純にコスト対策といった観点で業務の委託が行われているのあれば、場合によっては見直しが必要でしょう。
 

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