最低だったはずの元恋人。その意外な本性


しかしこの頃、そんな美香さんに変わらず接してくれる親しい友人の存在も目立ちました。

「人付き合いはかなり減りましたが、変わらず親しくしてくれた友人知人の存在は本当にありがたかったです。中でも、元彼の1人がすごく親身になってくれました。1人で育てるならもう少し会社を育てた方が良いと、事業を拡げるための資金を出資してくれたんです。それに、もし周りの目が気になるなら、俺の子だって言っていいよとまで言ってくれました」

その男性は、美香さんが妊娠する前、20代の頃に交際していた15歳年上の経営者だそう。 

「さすがに彼の子だとは言いませんでしたが、その言葉が大きな支えになりました。最悪、何かあったときはそうさせてもらおうと思うだけで、気持ちがかなり楽になったんです。もともと大らかな人ですが、彼も若い頃に離婚歴があり子どももいるので、シレッと1人くらい増えてもいいと思ってたみたいです。

彼と付き合ってるときは、実は私は浮気相手で他に本命の彼女がいることが発覚して別れることになり、最低な男だと思ってたんですが……人の本性ってわからないものですね。もう男女関係もないのに良くしてくれて本当に感謝してます」

一見、やはり美香さんは運の良い女性なのでは? と思ってしまいますが、おそらくこの男性もただのボランティアで美香さんに出資をしたりしないでしょう。

話を聞いていると、淡々とした口調の中にも、美香さんの責任感の強さは自然と伝わります。また身の上に起きたことに卑屈になったり、他人のせいにしたりもせず“自分事”として受け止める芯の強さも感じるので、これまでの仕事の実績もある分、彼も美香さんにさらなる成長の可能性を感じたのだと思います。

本当の意味で他人が手を差し伸べてくれるのは、“何もできない女性”ではなく、打てば響く可能性を感じさせるような女性なのかもしれません。

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「娘が生まれてからは、もうとにかく可愛くて愛おしくて、人目や孤独を感じる暇もなくなりました。赤ちゃんのお世話はもちろん大変でしたけど、こんなにずっと一緒にいてくれる存在は他にはないので」

 

娘さんのことを話す美香さんの表情は、一気に柔らかくなります。

「幸い、娘は赤ちゃんの頃から夜泣きもしないし、イヤイヤ期みたいなものもなくて、すごく育てやすい子だと思います。シッターさんに預けることも多いですが、人見知りもほとんどしないので助かってます」

子どもができてから、本質的な人付き合いも学んだという美香さん。子育てや仕事だけでなく、現在はプライベートも順調だそうです。