ファッションスタイリスト佐藤佳菜子さんが日常のおしゃれについてのアイデアや思いを綴る連載です。

 


関連記事
母を亡くしたときに心に誓ったこと【スタイリスト佐藤佳菜子さん】>>


「お盆にお墓詣りに行く代わりに、シャネル展に行こう」
と言ってきたのは妹だった。

毎年7月と8月は、あたらしい秋冬のシーズンの立ち上がりの季節で、お盆はいつもてんてこ舞い子。この時期の母のお墓詣りはいつも父の仕事になっている。まぁ、正直に申しますと、わたしのなかでは、母はお墓の中になんていない。あの世とこの世の時空を超えた彼女は、足での移動という概念を捨てたはずなので、いつもどこにだって行けるはず(知らんけど、たぶん)。

わたしが忙しいことだってそんなのきっとお見通しで、そして、母が亡くなって12年経ったいまだって、わたしが彼女をいつまでも恋しく思っていることも、ちゃんと気がついているに違いない。お墓に行かなくたって、わたしの心はちっとも母を放っておいてなどいない。

さて、冒頭の妹のセリフ。たまたま頂いた丸の内の三菱一号館美術館で開催中の「ガブリエル・シャネル展」のチケットを見たときに、妹は思ったのだ。これは、なによりもシャネルが大好きだった母の供養になると。それを聞いたわたしも大賛成した。ふざけた娘が計2匹いる計算になるけれども、それも彼女自身が生み出した産物なので文句も言えまい。きっと、あちらでニヤニヤしているであろう。

シャネル展の方はまったく想定していないでしょうけれども、こちらとしては大真面目にお盆の弔いを兼ねているので、もちろん服装はブラックになります。

ワンピース/ウィム ガゼット 靴/ヒューン

結果ですが、なんと、こちらが励まされてしまった。世代を超えて愛されているシャネルの傑作、ツイードのジャケットもバイカラーの靴もキルティングのチェーンバッグも、なんと彼女が70代以降の作品で、その晩年まで衰えぬファッションへの情熱と意欲を見ていたら、こんなんでヘコタレていられるかと、なんだか盛大に背中を押された気がして、展示を見終わって帰るころには、さて、まだまだこれからも力の限り頑張りますか、と姉妹ふたりそれぞれの抱負を胸に抱いていた。偉大なるシャネルの力か、空からの声援か。

 
 

母への贈り物は、ミュージアムショップで買った写真集。「ガブリエル・シャネル展」は、三菱一号館で9月25日(日)までやっているようなので、ご興味ある方はぜひ行かれてみてください。なんだか勇気づけられました。

 

しゃねる……?
ちゅーる……?


スタイリスト佐藤佳菜子さんの最新コーデ
▼右にスワイプしてください▼


バナー画像撮影/川﨑一貴(MOUSTACHE)
文/佐藤佳菜子
構成/高橋香奈子
 


前回記事「あまりに好きすぎて、定期便を申し込んだコスメ【スタイリスト佐藤佳菜子さん】」はこちら>>