ファッションスタイリスト佐藤佳菜子さんが日常のおしゃれについてのアイデアや思いを綴る連載です。
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最近、仕事では秋冬のシーズン真っ盛りです。今はニット、もうすぐコート。そんな時期になるとトレンドはなんですかとか、何を取り入れますか、気になるものはなんですか。とかご丁寧にたくさんのアンケートをいただくのですが、はっきり言って、いつもわたしもわかりません。しらんのです。
わたしはまずトレンドセッターとは程遠い、普通の服を愛する中年の婦人です。モード界を震撼させるファッションモンスターだったら、今季はなにが流行るからどうのこうの、とかっこよく話したりできるのでしょうけれど、わたしがトレンドや今季のアレコレを身を以て感じてくるのは、新しいシーズンの洋服で何ヶ月か撮影をしていく途中。
あれ、このニットよく使うな、とかこのパンツ毎月借りてくるけど、やっぱり素敵だな、この靴は本当に使いやすいな、とか、やっぱりわたしこのバッグ買おうかな。なんて調子です。それは、シーズンの初めにブランドの展示会で見るときに目についたものとは、いつも全然違っていて、華やかな場ではなかなか目につかない、地味なニットだったり、ひかえめにしていたパンツだったりするのです。
言ってみれば、名脇役的な人々。派手なアイテムではないけれど、何度も見ているうちにしみじみいいな、と思うようなものが多いです。って、そんな言うに忍びないアイテム、ますますトレンドアンケート映えしない。つくづく、トレンドを聞くに適さないつまらんやつで、すみません。
それでいまも、絶賛、秋冬のトレンドがどうのこうのと聞かれているのですが、やっぱりわかりません。10月ごろになってやっと、なにか好きなものが出てきているでしょう。という遅延予報。いらんな、そんな予報。早く、答えんか。と思われているでしょうね。
今のわたしのトレンドは、もはや夏なのか秋なのかわかりませんが、のっぺらぼうな小物。わたしはカオナシバッグと言っていますが、つまり、金具もデザインもないようなぬるんとした小物。いまは、印象の強い小物でアクセントにするというよりは、そっとなじんで寄り添う無色透明な存在くらいの小物がすきです。仕事で使っているうちに好きになりました。愛しのカオナシたちはこんな感じ。
本音を言えば、もう大人だからトレンドなんて自分にしっくりくるものだけでいい。でも、流行をまったく無視をしていると、ただの変わったオバサンまっしぐらだから、そこのさじ加減はとても重要だと思うけれど、でも、なにもかも全部の流行りに手を出す必要もない。ポイントで、わたしのスタイルを活性化させてくれるものだけに手を出す。これが昨今のわたしのトレンドへの距離感です。絶対に使える好きなものだけ。
古いものを大切にという心がけはとても感心するけれども、全身昔のアイテムだけだと、よっぽどのセンスやバランス感覚がない限り、やっぱり残念ながら時間が止まった人に見えるのは事実。じゃあ、何を残して、何を改めるか。それが中年婦人の課題かもしれない。冒頭から最後までしつこくてすみませんが、やっぱりこの秋のトレンドは、いまはわかりません。でも、好きなものが出てきたら、また、みなさんとシェアしたいなと思っています。
今週は暑かったのと忙しかったので疲れました。みなさんはどんな一週間でしたか?週末が待ち遠しいです。うちの三つ子はきょうも元気です。
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バナー画像撮影/川﨑一貴(MOUSTACHE)
文/佐藤佳菜子
構成/高橋香奈子
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