「ひとつ年を重ねるごとに酒が弱くなる。年齢を重ねた酒好きであれば、一度は感じたことがあるのではないだろうか」。そう問いかけるのは、酒ジャーナリストの葉石かおりさん。ハイ、あります! 痛感しております! 会食の前には白ラベルの「ヘパリーゼW」を飲んでいた筆者。40代になると、金ラベルの「ハイパー」→漆黒ラベルの「プレミアム」と武装強化に励むようになり、最強の「極」まであと一歩です。

若い頃は「酒豪」を誇っていたという葉石さんも、「もし20代と同じ量の酒を飲んだら二日酔いではなく、間違いなく三日酔いになる(怖くて飲めないけど)」と、加齢によって酒が弱くなった現実を嘆きます。ですが悲しんでばかりはいられません。この先も健康に酒を飲むにはどうしたらいいか? を考えるのが酒を愛する者の使命。そうして完成したのが、葉石かおりさんの著書『名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必修講義』です。

 

葉石かおり(はいし・かおり)さん
1966年東京都練馬区生まれ。日本大学文理学部独文学科卒業。ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経てエッセイスト・酒ジャーナリストに。「酒と健康」「酒と料理のペアリング」を核に執筆・講演活動を行う。2015年に一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。国内外で日本酒の伝道師SAKEEXPERT を育成する。著書に『酒好き医師が教える最高の飲み方』『日本酒のおいしさのヒミツがよくわかる本』ほか多数。

 

「加齢で酒に弱くなる」原因は大きく2つある

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葉石さんが医師たちに「酒と健康の疑問」を投げかける本書は、酒飲みのあるあるエピソードも満載。冒頭の問いかけに「わかりみが深すぎる……」としみじみした人の中には、こんな現象が起きている人もいるのではないでしょうか?

「加齢によって出てきた症状が『酒を飲むとすぐ眠くなる』こと。しかも飲んでいる場で眠くなってしまうことも多く、恥ずかしながら、ひどいときには船をこぎながら宴席に座っていることもある」(葉石さん談)

とはいえ「加齢で酒が弱くなる」なんて気のせいでは? 鍛えればまた強くなれるっしょ?
酒好きとしてはそう考えたくなりますが、久里浜医療センター院長・樋口進さんは葉石さんの問いにこう答えます。

「(年を重ねると酒が弱くなるのは)残念ながら本当です。多くの方が実感されていると思いますが、加齢とともに人はお酒に弱くなっていきます。

原因は大きく2つあります。ひとつは加齢によって肝臓の機能が落ち、アルコールを分解するスピードが遅くなるからです。そうすると、同じ量を飲んだとしても、若い頃よりアルコールの血中濃度が高くなってしまうわけです。若い頃と同じ酒量を飲んで、翌日お酒が残っていると感じるのはそのためです。具体的に、分解スピードがどのくらい落ちるかというデータはありませんが、アルコールの分解速度が一番速いのは30代といわれています。その後は徐々に処理能力は落ちていくと考えられます」(樋口さん)