誰もが抱えるささやかな「嘘」にまつわる、オムニバス・ストーリー。 

これまでの話早穂子(52)は生まれも育ちも港区白金台。商社マンの夫・陽一(55)と結婚してからは、専業主婦として1人息子の光輝(27)が東大から一流銀行に就職するのをサポートしてきた。その光輝が連れてきた彼女・桃田真凛(23)は妊娠しており、スピード結婚をするという。なんとか取り繕う早穂子だったが、真凛とかみ合わない。息子を心配するあまり、結婚をするなら覚悟が必要だと二人に伝えてしまった早穂子だが……?
 


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鬼姑?それとも普通?割れるアラフィフの意見

 

「えええ!? それで『子どもができたからってドサクサに結婚するな』って言ったの? 早穂子、鬼姑だわね……」

アラフィフともなれば、いくら親友だからと言ってそう頻繁に集まれるものではない。しかし今日ばかりは一刻の猶予もなく、早穂子は容子と亜希に連絡をした。

話を聞いて欲しくて集合したものの、二人は早穂子の行動に批判的。美容外科医の容子は独身、亜希はバツイチ子なしなので、アラフィフとはいえ、姑の視点というよりも嫁の視点の方が共感できるようだった。

「だって、他に本当のことを言える人はいないのよ。真凜さんのご両親はアテにならないし、陽一さんも『マリンちゃーん』なんてでれっとしちゃって全然だめ。ここは嫌な役割だけども、私が言うしかないのよ!」

「でもなあ、それで早穂子のいう通りに二人が別れたとして、誰も幸せになれなくない? 第一、マリンちゃんの赤ちゃんはどうするの」

容子がズバッと痛いところを突いてきた。