誰もが抱えるささやかな「嘘」にまつわる、オムニバス・ストーリー。
光輝の予想もしなかった本心
「お母さん、昨日はありがとう、本当に助かったよ」
久し振りに実家に寄った光輝は、家に着くなり早穂子に頭を下げた。
「大阪から帰ってきたのね、真凛さんの病院には寄って来たんでしょうね?」
「もちろん! 本当は昨日の夜すぐに東京に帰りたかったんだけど、役員のアテンドで簡単にはいかなくて。お母さんが真凛についていてくれて助かったよ、ありがとう。真凛は明日にも退院できそうだ」
屈託なく大阪土産を差し出す光輝を、早穂子はじろりと睨む。
「だからと言って、私が真凛さんとのことを全面的に認めたわけじゃないのよ。だいたい、真凛さんのご両親はどうなってるの? いくら仲違いしているからって本当に連絡しなくていいの? 」
光輝はうーん、と考えこんでから、おもむろに口をひらいた。
Comment