悪影響の可能性があるのは、スクリーン活動の「すべて」


オンライン授業が導入されたり、タブレットが授業で活用されたりと、子どもたちの生活においてスクリーンタイムは増えていく一方ですから、彼らの前からデジタル機器を完全に排除するのはほぼ不可能でしょう。であれば、デジタル機器とのうまいつき合い方を模索するのが賢明ではないでしょうか。そこで知りたいのは、スクリーンタイムの「どの要素」が悪影響を及ぼすのかということ。「スクリーンに触れる長さ」なのか、「活動の種類」なのか。もしくは「見ているものの性質」なのか……。

残念ながら、ダンクリー博士はさまざまな研究結果をもとに、「すべてのスクリーン活動」が悪影響を及ぼす可能性があるといいます。それが学習ゲームのような有益とみなされるものであっても例外はないとのこと。しかも、映画、ドラマといった「受動的スクリーンタイム」よりも、ゲーム、SNSのような「双方向スクリーンタイム」がより多くの機能障害を引き起こすとのことでした。

「よくある誤解のひとつが、調節不全の原因となるのは暴力的なゲームだけでなく、教育的なゲームや、パズルのような一見よさそうなゲームも悪影響となることが知られていないことだ。もうひとつは、ゲームやインターネット、SNSに『依存』している子どもだけ、親がスクリーンタイムを制限しない場合だけが問題になると誤解している点だ。実際には多くの子どもは依存症の有無にかかわらず、デジタルスクリーン症候群の症状を示すし、わずかな時間スクリーンに接するだけで、過剰な刺激を受けて調節不全になる子どももいる」

 


「ほんの少し」でも「やりすぎ」でも差はない!?


ダンクリー博士によると、親が子どもの1日のスクリーンタイムを1~2時間以下に制限したとしても、その時間の一部または大部分が「双方向」なものであれば、問題が生じやすくなっていたそうです。ちなみに、この1~2時間という制限時間は、米国小児科学会が推奨している長さでもありますが、博士の報告を聞く限りではそれも適切ではないことが分かります。ダンクリー博士は、デジタル機器を排除するのが困難な今日の状況に対して警鐘を鳴らしています。

 

今日の『適度な使用』は、歴史上かつてない『最悪のレベル』でデジタル機器に子どもをさらしていることなのだ。スクリーンタイムの『よい』と『悪い』、あるいは『やりすぎ』と『ほんの少し』を区別しないように、親に注意を促すのはそのためだ」

ほんのちょっとなら大丈夫──ついそのように考えてしまいますが、デジタル機器に関してはそんな気の緩みが命取りになるようですね。