不器用だが懸命。愛すべき変人4人が愛おしい『初恋の悪魔』
脚本家・坂元裕二さんの最新作ということで放送前から期待が高まった本作は、刑事ものであり謎解き・恋愛・青春群像劇……などさまざまな要素を持つ作品。凶悪犯罪愛好家で停職処分中の刑事・鹿浜鈴之介(林遣都)、「自分みたいな人がいるから勝ち続けられる人がいるんです」と自己犠牲精神が強い平和主義者の総務課・馬淵悠日(仲野太賀)、理屈っぽくて妄想癖がある会計課・小鳥琉夏(柄本佑)、ぶっきらぼうだが情に厚い星砂(松岡茉優)ら4人の物語。演じる俳優陣は4人とも演技に定評があり、贅沢すぎるラインナップ……!
見事に全員変人なのですが、それぞれがコンプレックスや過去を抱えつつ、懸命に生きている様子が愛おしい。それぞれの登場人物がフィーチャーされる回があり、彼らの傷や後悔が会話のやり取りによって癒されていくシーンは演技もセリフも素晴らしく、見ているこちらにも刺さる部分があって、他人事とは思えません。包んでくれるようなセリフに、くぅ、だから坂元裕二さんの脚本、好き……となることうけあいです。
優秀な刑事だった悠日の兄・朝陽の死や、星砂の二重人格について、少しずつわかってきた物語、この後どんな結末が、どんなセリフのやりとりが待っているのか、楽しみで仕方がありません。多分難しそうなのですが、できたら4人とも幸せになってほしい……。
ぶっとんだ家庭教師の”落としどころ”に感心する『家庭教師のトラコ』
橋本愛演じる「どんな志望校も合格率100%! しかも授業料はそちらが決める!」というなかなか聞かない触れ込みの家庭教師・トラコが、年代も状況も悩んでいる内容も違う3人の母子と接し、子どもたちにユニークなやり方で「お金の正しい使い方」を伝えていく……というストーリー。3人の母子はワーママの真希(美村里江)と知恵(加藤柚凪)、定食屋を切り盛りするバツイチの智代(板谷由夏)と高志(阿久津慶人)、愛人をしていた相手の後妻になったけれど家に居場所がない里美(鈴木保奈美)と守(細田佳央太)。
トラコは「教育方針に口を出さない」「指導中は覗かない」「授業の日はお宅に泊めていただく」という3つの約束をし、教える相手によって全くキャラが違います。幼稚園児の知恵のところにはメリーポピンズのようないで立ちで話し方もゆっくり、小学生の高志のところにはマニッシュな服装に身を包んだ豪快な熱血教師、年頃の高校生の守のところには、ちょっと色気のあるお姉さん風……といった感じ。さらに、テンション低めな素のトラコと、一人4役を演じているといってもいい橋本愛さんがすごい。
トラコとの関わりを通じて親子が少し前向きになったり自信を持てたりしていく様子に励まされる一方で、複雑な環境で育ち、本当の目的を明かしてしまったトラコ。この後彼女と3組の親子たちがどうなるのか、最後まで目が離せません。
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